オリンピックへの道BACK NUMBER
バンクーバー五輪選考前に大怪我、そして失踪…絶望にいた高橋大輔を救った長光コーチの言葉「何かあったら私があなたの前に立つ」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2021/12/25 11:06
高橋大輔を支え続ける長光歌子コーチ。バンクーバー五輪代表選考直前、絶望の中にいた高橋を救ったのは長光の言葉だった
「満足のいくフリーはできませんでしたが、優勝は心からうれしいです」
反省と喜びを語り、なお反省が口をついて出た。
「(フリーが)終わった瞬間、『こういう演技をしないよう、練習していこう』と思いました」
目指すところはただ復帰するだけではなく、全日本選手権優勝でもなく、バンクーバー五輪だった。トリノ五輪で8位入賞したものの、ショートプログラム5位の位置からフリーが納得のいかない演技に終わったことが不本意だった。
「自分に負けた自分が、もう悔しかった」
手術と過酷なリハビリを経て氷上に戻ってきた過程は、自分との闘いでもあったし、2度目のオリンピック出場を心の支えにしつつ自分に打ち克ったことを示したのが、全日本選手権だった。
優勝によって代表をつかんだ高橋は、バンクーバーで日本男子初の表彰台となる銅メダルを獲得、さらに世界選手権でも日本男子初の優勝を達成することになった。
あの全日本選手権から12年
あの全日本選手権から、12年が経った。
高橋大輔は、村元哉中をパートナーとしてアイスダンスにところをかえて、昨年に続き、全日本選手権にエントリーした。今回で出場は実に16回を数える国内最高の舞台で再び、立つ。そのかたわらには、村元の恩師である濱田美栄コーチ、そして長光歌子コーチがいる。