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“60歳超え指揮官”たちが続々再登板 データ偏重のMLBで「オールドスクール」が評価されるワケ《シャーザーも熱望》
text by
四竈衛Mamoru Shikama
photograph byAFLO
posted2021/12/31 17:02
ショーウォルター氏は1992年にヤンキースの監督に就任、2018年のオリオールズを最後に監督職から離れていた。2017年以降4位3回、3位2回と低迷が続くメッツを建て直せるか
その一方で、机上の数値だけでは勝ち抜けないことも明白になってきた。21年は、トニー・ラルーサ監督(77)率いるホワイトソックスがア・リーグ中地区を制したのをはじめ、ワールドシリーズはブライアン・スニッカー監督(66)のブレーブスと、ダスティー・ベイカー監督(72)のアストロズが対決。ベテラン指揮官の手腕に注目が集まった。ベーブ・ルース以来と言われた大谷翔平の「二刀流」を支えたのも、策士として知られる大ベテラン、ジョー・マドン監督(67)の巧みな手腕によるところが大きい。
ある意味で、データに偏重気味な「ニュースクール」とかつての「オールドスクール」は、必ずしも相反するものではないことが証明されたとも言える。
就任後、オンライン会見に応じたパドレスのメルビン新監督は、新天地での再出発を前に「新たな人材もいれば、経験豊かな人間もいる。それぞれをいいバランスでミックスすることが大事」と持論を語った。
大投手シャーザーが望んだ監督
孫のような世代の若手選手を率いることになったショーウォルター氏は、笑みを浮かべつつ、抱負を口にした。
「私は(若い)彼らがどんな音楽を聞いているのか知っているよ。私がロッカールームの周辺で、そんな音楽をハミングしていたら、みんなが驚くかもしれないね」
優れた戦術眼や豊富な知識だけでなく、機転の利くシャープさもあり、選手からの信頼感も厚い。過去、サイ・ヤング賞に3回選出され、今オフ、メッツ入りしたマックス・シャーザー投手が、候補者6人の中で新監督として望んでいたのはショーウォルター氏、とも伝えられていた。
65歳の知将は、自らのスタンスについて「ハッキリ言うが、私は常にスポンジ的だ」と、どんなことでも吸収する柔軟性があることを強調する。
「結局は、適応するか、死ぬべきか。我々が何かに頑固になるのは恥ずべきこと。我々には、いろいろな異なるやり方がある」
熟練監督たちの眼力と戦術が、コンピューターに操られてきた米球界に、今後、新たな潮流を生み出すのかもしれない。