プロ野球PRESSBACK NUMBER
巨人・岡本和真の“飛ばし過ぎ”伝説「菓子折りを持ってよく謝りに…」恩師が期待する“3冠王”と驚いたゴールデン・グラブ賞
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph byHideki Sugiyama
posted2021/12/24 11:07
今季は2年連続でホームラン王&打点王の2冠を獲得した巨人・岡本和真。岡本を中学1年の時から知る智弁学園・小坂監督はその活躍を喜んだ
高校入学当時から飛ばす能力は上級生を含めてもずば抜けていたが、当時は青山大紀(元オリックス)ら能力の高い上級生が数多くおり「多少、遠慮気味だった」と小坂監督。だが、1年春の四国遠征で右中間に特大アーチを放つなど、起用すれば類いまれな能力を発揮していた。1年夏の県大会ではほとんど起用しなかったが「もっと起用しておけばよかったと今でも後悔しています」と小坂監督は苦笑いを浮かべる。
その後、3年生が抜けた1年秋から4番に座ると、そこからホームランの量産態勢に入った。打席に立てばバックスクリーンや右中間、レフトの場外とあらゆる方向に放物線を描いた。「これから何本、打ち続けていくのだろう」と指揮官が衝撃を覚える日々が続いた。
3年春に出場したセンバツ初戦の三重戦では、大会史上19人目となるバックスクリーン弾を含む2本のアーチをかけるなど、高校通算本塁打は73本。高校生世代最強の右のスラッガーとしてその名を轟かせた。
後輩の目標になった「岡本ネット」
智弁学園のグラウンドには30メートルほどの高い外野ネットがある。右翼方向には2016年に創設された校舎があり、レフト後方には道路を挟んで民家が並んでいる。
「岡本がいた頃は3軒向こうの家まで飛ばして屋根に当ててしまい、菓子折りを持ってよく謝りに行っていました」
当時の智弁学園は学校創立50周年に向けて、校舎の建て替え工事が進められることになった。だが、度重なる“打球超え”に、校舎建て替えと同時にグラウンドのネットの増設工事も始まり、現在の30メートルのネットは18年冬に完成した。このネットは密かに「岡本ネット」とも呼ばれ、この秋、阪神にドラフト4位指名を受けた前川右京は、このネットを超えることが最大の目標になっていたという。
そもそも岡本の“飛ばす能力”の根源はどこにあったのか。小坂監督は言う。
「軸でしっかり打てるところと、バットの先端に自分の体重を伝えるのが上手いところではないでしょうか。無駄な動きがなく、頭の部分と体の軸がブレているところを見たことがない。それは下半身が安定しているからですね。岡本は太ももが太くどっしりしてましたが、それは今も思いますね」