プロ野球PRESSBACK NUMBER
巨人・岡本和真の“飛ばし過ぎ”伝説「菓子折りを持ってよく謝りに…」恩師が期待する“3冠王”と驚いたゴールデン・グラブ賞
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph byHideki Sugiyama
posted2021/12/24 11:07
今季は2年連続でホームラン王&打点王の2冠を獲得した巨人・岡本和真。岡本を中学1年の時から知る智弁学園・小坂監督はその活躍を喜んだ
3年春のセンバツから戻ると、プロを本格的に視野に入れた岡本に指揮官はあらゆる経験を積ませた。そのひとつとして、直後の春季近畿大会では内野ではなくレフトの守備につかせることも多かった。
その頃、根本的な原因は不明だが、岡本が打撃でスランプに陥ったことがあった。
「あの頃は打てなかったうえに、内野にいると存在感が出るけれど外野に行くと岡本の存在が消えてしまうほど(のスランプ)だったんです」
守備面であれこれ考えることが多かったことが影響したのだろうか。高校で1年生から注目される打者は、3年春に壁にぶち当たることが多い。1年秋から突っ走ってきた岡本に訪れた初めての試練ではあったが、夏までには「3番・一塁」で自身の位置を定着させ、3年夏の奈良大会では5試合で3本塁打を放ったのはさすがの一言だ。
「基本的には周囲をあまり気にしないタイプ。打席でもあの頃からどっしりと構えていましたね。練習では分からないことは流さずにしっかり周囲に聞いて理解していました。疑問に思うことをうやむやにする子がいますが、岡本はわからないことの確認がちゃんと出来る子でしたね。バッティングに関しては研究熱心。自分のスタイルも維持しながら、こういう時はどうしたらいいのかをよく聞いてきた記憶があります」
怒った記憶は数えるほど
2年半の中で小坂監督が注視したのはデッドボールへの対処だ。あれだけの打者だと、四死球……特に力んだ投手に死球をぶつけられてしまい、歩かされることも少なくなかった。
「相手投手を睨み返すとか、横柄な態度は取るなとは言いましたが、実際にそういう態度を取ることはなかったですね。入学直後の1年生の時、追い込まれてからあっさり三振してベンチに帰ってきたことがあって、その時は“簡単に帰ってくるな”と怒ったことはありましたが、内面的なところで諭したことはそれくらい。感情を表に出すことはほとんどなかったです」
打席も含め、確かに普段から尖った表情を見せたことはほとんどなかった。大舞台で硬さを見せることも少なく「試合で緊張したことはないんじゃないでしょうか。今も、テレビで見ていてもそれは感じます」と恩師は口にする。
今は現地で試合観戦することはほとんどないが、テレビを通しても高校時代のスタイルはほとんど変わっていないと感じている。
「プロに行っても無駄な動きがないのは変わらないですね。今は足の上げ方を工夫していることは感じますが、プロの投手にしっかり順応できている。そこはさすがです」