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昨年戦力外→今はガソリンスタンドで…元ホークス山田大樹が“フリーター生活”の理由「お客様から『ナゴヤドーム観に行ってました』って」
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKotaro Tajiri
posted2021/12/28 06:00
山田大樹さん33歳。「元祖・育成の星」。そんな異名をとった左腕投手は今――
工藤前監督が「『山田が迷惑かけてませんか?』って(笑)」
球場の一塁側ダグアウト奥の通路には偉大なOBたちの在学時の写真などが飾られていた。イチロー氏、山崎武司氏、そして工藤公康氏。ホークスの工藤前監督には山田さんもお世話になった。
「実は工藤さんの当時の同級生の方の縁で、名電でコーチをすることになったんです。連絡は、僕には直接来ないけどその方にはたまに電話があるみたいです。『山田が迷惑かけてませんか?』って(笑)」
普段から明るく振る舞う工藤前監督も実は結構シャイな性格。“らしい”エピソードに触れられたのも微笑ましく思えた。
来年から専門学校へ。「また3年間を乗り越えますよ」
山田さんは来年4月から志望していた専門学校に入学することが決まっている。「その中でも名電のコーチは出来れば続けたい」と話す。
「東京から名古屋に移って、首都圏に比べると野球塾のようなものがこちらには少ないなと感じました。医療系の知識を持ったうえで、子どもたちに野球を教える仕事も面白い。ただ、トレーニング法や体のケア、野球そのものはどんどん進化しています。そのメソッドに置いていかれてはいけない。最先端を吸収し、学べる場所ってやっぱりプロ野球なんです。トレーナーという立場でプロ野球を経験し、時代に合わせた応用を学ぶ必要性も感じています」
来年から3年間は専門学校に通いながら、なんらかのアルバイトをして生活費を賄っていくという。
「プロ野球でも育成で3年間頑張り続けたらいいことがありました。素晴らしい経験をさせてもらいました。それを知っているから、また3年間を乗り越えますよ」
山田さんは今も「やりたいこと」を見つけて、そこに向けてチャレンジを続けている。そして何より、充実感溢れるその表情が、夢を持ち続けることの大切さを教えてくれている気がした。