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昨年戦力外→今はガソリンスタンドで…元ホークス山田大樹が“フリーター生活”の理由「お客様から『ナゴヤドーム観に行ってました』って」
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKotaro Tajiri
posted2021/12/28 06:00
山田大樹さん33歳。「元祖・育成の星」。そんな異名をとった左腕投手は今――
そんな会話をしながら車は郊外へ。そして到着したのが春日井市内にある高校野球の名門・愛工大名電のグラウンドだった。
「今年の春から、日曜日の週1回、ボランティアコーチをしているんです」
強豪・愛工大名電で指導を始めた経緯
母校でもないのに、一体なぜ。「野球を頑張ってきたおかげで人脈に恵まれました」と話す山田さんだが、就任の理由がなかなか興味深かった。
「愛工大名電の倉野(光生)監督が『名電を高校野球のソフトバンクホークスにしたい』という目標を打ち出されていて、僕がホークスに在籍していたこともあって声をかけていただきました」
勝利と育成の両立。愛工大名電は大きなテーマとしているという。
グラウンドには倉野監督の姿もあった。挨拶をして“ホークス化”の話題を振ると「そうそう」と笑顔で、練習グラウンド内にある球場施設などを案内してくれた。
愛工大名電が進める“ホークス化”
プロ野球顔負けの設備に度肝を抜かれた。球場ネット裏の部屋には球速や打球速度などの計測機器やモニターが備えられている。球場内もスピードガンがセンター後方とネット裏に2か所。ネット裏には投手の球数表示もされる電光掲示板があった。
屋内練習場も広大で、5か所ある屋内ブルペンにもスピードガンなどが備え付けられているという。そして、ブルペンは屋外にもあった。
寮の中には初動負荷トレーニングを行うマシンをはじめ、ウエイト器具がずらりと並びトレーニングルームだけで3か所。部員は全学年で5~60名なので、十分すぎるほどだ。
「ホークス化ということでまずは設備を整えようと。そのためにホークスのファーム本拠地の筑後にも足を運んで見学をさせてもらったことがあります」(倉野監督)
また、育成については「甲子園の夢を持って入学する生徒たちですが、高校3年間で野球を終えるわけではなく次のステージに向かっていくのがほとんど」ということで、3年夏の大会終了後も“引退”をせずに今後のステップのための練習環境などを、現役部員と時間や場所を分けながら整えているのだという。
山田さんも笑顔で話す。
「野球で良い思いをたくさんさせてもらいました。野球に恩返しをしたいし、次の世代にも野球で良い思いをしてもらいたい。その手伝いをしたい」