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「こんな弱っちい姿を見るのは初めて」浦和で14年間追い続けたカメラマンが思い出す、阿部勇樹が“漢”になった夜
text by
近藤篤Atsushi Kondo
photograph byAtsushi Kondo/URAWA REDS
posted2021/12/17 11:06
記者会見で「絶対に泣かない」と宣言していた阿部勇樹。お世話になった人々への思いを問われると、溢れるものをこらえきれなかった
そして今は2021年12月。残す試合は天皇杯の決勝だけだ。
今季、浦和のJリーグ開幕戦となった2月27日、阿部勇樹は39歳で、なんと開幕戦のピッチにキャプテンマークを巻いて23度目のJ1の舞台に立ち、しかもゴールまで決めた。
リカルド・ロドリゲスという新しい監督の下、もう一度阿部勇樹は復活するかのように見えた。
でも、それは「見えた」だけだった。
阿部勇樹の名前は次第にスターティングメンバーからフェードアウトし、結局のところ、こんな寂しい結末のシーズンとなった。40歳、その事実からはたとえ阿部勇樹でも逃れられない。人は誰でも少しずつ歳を取り、誰も時間からは逃れられない。開かれた本のページは何度も捲られ、やがて最後の1ページとなる。
阿部勇樹の物語もまた、その他大勢の偉大なプレーヤーたち同様、閉じられることになる。
ひとつ思い出すことがある。
今年の8月、ある用事があって浦和レッズのクラブハウスを訪れた際、練習後のジョギング中だった彼がいきなりこちらに走ってきて、こう言った。
そのうち本でも出すことがあるかもしれないから、その時は今までに撮ってもらった写真、使わせてもらっていいかな? と。
考えてみると、この14年間で阿部ちゃんから何かを頼まれたのは、あれが初めてだった。
カメラマンとして撮り続ける側と撮られ続ける側、彼とはずっとそういう関係に過ぎなかった自分にとって、最後の最後でひとつ頼み事をされたのが、今はものすごく嬉しい。
阿部ちゃん、本当におつかれさまでした。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。