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「彼らに何もできていない。申し訳ない」 難民GKがぬぐえずにいた、日本とミャンマーの仲間に対する“沈痛な思い”
text by
木村元彦Yukihiko Kimura
photograph byNaoki Morita/AFLO
posted2021/12/19 17:01
ピエリアンアウンは今、必死に日本の舞台で戦っている
「あのクーデターはミャンマーという国にとって何ひとつ良い事が無い。誰のためかといえば、国軍の幹部の保身のためだけに行われた軍事行動じゃないか。そして、その『ミャンマー国軍は日本によって作られた』と当の国軍幹部が謝辞を言っているわけでね」
日本財団は毎年日本・ミャンマー将官級交流プログラムを実施してきたが、その中の2017年におけるエーウイン中将の発言である。
日本は官も民も合わせてミャンマーに対する最大の投資国で、その膨大な資金は軍閥企業に流れ、国軍のATMとさえ言われている。特にその窓口と進出をサポートして来たのが、125社の企業が加盟している日本ミャンマー協会(渡辺秀中 会長)である。軍事クーデターが起こった後、これに反対する1300人を超える市民が殺害され、1万人以上が逮捕されている。欧米先進諸国がこの卑劣な軍事政権を認めずに距離を取っているが、同協会はミャンマー国軍を擁護し、渡辺会長は「これはクーデターではない」とまで発言している。
8月25日に在日ミャンマー人と日本人の有志たちは平河町の日本ミャンマー協会のオフィス前で抗議行動を起こしていた。
「日本ミャンマー協会はテロリストミャンマー軍部の後ろ盾をただちに辞めろ!」「ミャンマー国軍の資金源を断て!」
林立するプラカードの合間から、マイクを握った人々から多くのスピーチがなされた。その中にはヤンゴンで不当に逮捕され、悪名高いインセイン刑務所に収容されていたフリーランスの北角もいた。
「私が刑務所から救出されたのは、そちらの協会の太いパイプによるものであれば、一度お礼に出向きたい。しかしその太いパイプの使い方がミャンマー市民に沿っていないと思うから今日、この場に来ました」
公式戦のデビューを願う気持ちは同じである
律儀な北角は解放の礼を述べてから、抗議の声を上げていたが、解放するために日本ミャンマー協会が動いたとしても決して褒められるものではない。そもそも「最後のフロンティア」の呼びかけの下で投資を呼び掛けて、国軍を肥え太らせ、何の罪も犯していない日本人ジャーナリストを逮捕するような政権を育てたことが、罪である。
日本外交が欧米のような厳しい態度を示さないのは、そうすると中国政府を利するからという言いわけを政府や外務省は盛んにしてきたが、結局、その独自のパイプは機能しなかった。
ミャンマーの選挙の監視に行った日本財団の笹川陽平会長は「選挙は公正に行われた」と発表。しかし、その発表をあざ笑うかのように国軍が「不正選挙」という言いがかりをつけて起こされたのが、今回のクーデターである。メンツをつぶされたにも関わらず、笹川会長は、この件に関しての説明責任を果たしていない。
北川も北角もピエリアンの動くところに足しげく通って来ている。公式戦のデビューを願う気持ちは同じである。