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『M-1』伝説の逆転劇「鳥人」→「チンポジ」を笑い飯&パンクブーブーが振り返る「笑い飯は“あえて”優勝しなかった…が一番恥ずかしい」
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byShigeki Yamamoto
posted2021/12/19 11:01
2010年M-1王者・笑い飯の哲夫さん(左、46歳)、2009年M-1王者・パンクブーブーの佐藤哲夫さん(右、45歳)
哲夫 はい、ちょっと、そういう風に見えたんです。で、次々と「チンチンポジション」「チンチンポジション」とめくられていくのを見ながら、待てよ、と。あそこ、普通は、コンビ名が出るところやなと思って。冷静さを取り戻して眺めたら、全部「パンクブーブー」やった。そこで「チンポジ」って、相当あかんかったんやなと実感しました。
佐藤 そら、そうだろ。全国ネットで下ネタはリスク高いよ。会場の女の子の中には、笑っているところを(カメラに)抜かれたら嫌だなという意識が働く子もいる。お客さんも劇場で見ている感覚とはぜんぜん違うから。
――ネタうんぬん以前に、1本目にあまりにも高い評価を受けると、2本目は難しくなってきますよね。
哲夫 そうなんですよねー。だから、延長線上にあるネタというか、続きを見ている気分になれるようなネタがいちばんいいんでしょうね。僕らのようにガラッと変えると、1本目の余韻が消えてしまうので。どうしたって、ギャップは生まれますよね。歴代のチャンピオンは、だいたい素直に同じテイストのネタを続けて成功してはりますよね。僕らも後になって、言われましたもん。同じようなんが見たかった、って。「牛人」でも「馬人」でもよかったのかもしれません。
「笑い飯はあえて優勝を狙わなかった」が一番恥ずかしい
――本当は「田んぼ入道」という、同じようなファンタジー系のネタがあったんですよね。
哲夫 ただ、あれは、まだ完成し切ってなかったんです。同じようなネタをして、1本目より完成度が低かったら、それはそれで印象がよくないと思ったんです。でも今になって考えると、1本目があれだけ盛り上がったんだから、2本目は少々未完成でもよかったのかなと思います。1本目で出来上がった雰囲気のところから始められるわけやから。足りない分も、その雰囲気が補ってくれたんちゃうかな。
佐藤 ただ、そういうのって、今だから言えることだからね。じゃあ「牛人」で滑ったら、どう責任取ってくれんのよ、って思うじゃない。
哲夫 あと、そろそろ同じ雰囲気のネタを続けて優勝するというパターンも、お客さんは飽きてきてるんじゃないかな、というのもあったんですけどね。
――2本目に「チンポジ」を選んだことについて、未だに「笑い飯はあえて優勝を狙いに行かなかったんだ」というような言い方をする人がいますよね。そんな笑い飯がカッコいいんだ、と。