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「フライングしたら税金も払えない」賞金1億円をかけた0.01秒のスタート…最強ボートレーサー峰竜太が明かす“覚悟と重圧”
text by
曹宇鉉Uhyon Cho
photograph byJapan Motor Boat Racing Association
posted2021/12/10 17:02
現在、ボートレース界最強レーサーと称される峰竜太。2年連続3度目の賞金王を目指し、14日から開催されるグランプリ「賞金王決定戦」に出場する
高校卒業後、競争率20倍とも言われる狭き門をくぐり抜けて、峰は「やまと競艇学校(現ボートレーサー養成所)」に合格。1年間の訓練生活に入った。合格者のおよそ半数が脱落すると言われる厳しい養成所での生活だが、本人いわく「それほど苦にならなかった」という。
「命がけの競技なので、安全面や公正であることはみっちり叩き込まれましたけど、訓練がきついとは思いませんでした。もちろん遅刻だったり礼儀だったり体重管理だったり、規則はめちゃくちゃ厳しかったです(笑)」
身長173cmと、ボートレーサーの中では大柄な部類に入る峰。50kg台前半でボートに乗るうえで、減量で苦労したことはないのだろうか。
「若いときは余計な筋肉がついていたんで、多少は苦労したこともありますね。ボクサーがやるような“水抜き”で体重を落としていた時期もありました」
「願望と目標は別物」地道に腕を磨いた若手時代
19歳だった2004年11月に地元の唐津でデビューした峰は、またたく間に頭角を現していく。22歳で最高クラスの競走であるSG「笹川賞(ボートレースオールスター)」にファン投票で初出場し、23歳でSGに次ぐグレードのGⅠ競走で初優勝。経験豊富な30代以上の選手が強いとされるボートレースの世界において、異例のスピードで階段を駆け上がっていった。それでも本人は「僕の中では、もう少し高望みしていた」と若手時代を振り返る。
「20代のときはもっとSGに出たかったし、勝ちたかった。いま思えば順風満帆だったかもしれませんけど、目標はもう少し高いところにあったので、決して満足はしていなかったです。目の前にSGという上の世界が見えるわけじゃないですか。とにかく『ここで走らないことには一流とは言えない。早くこのステージに行きたい!』という気持ちだけでした」
自他ともに認める負けず嫌いの峰は、「昔から1位になりたい欲求が本当に強いんですよ」と苦笑する。とはいえ、実力が足りないうちは理想との折り合いをつけていたようだ。
「デビューしたての若造が『SGで走りたい』と言っても、実力が伴っていなければただの願望になっちゃうじゃないですか。願望と目標はまったく別だと思っているので、まずは『レースで1着を取りたい』から始まって、次は『最終日の優勝戦に進みたい』、その次は『優勝したい』と徐々に目標をアップデートしていきました。自分で言うのもおかしいですけど、本気でボートに夢中になっていましたね(笑)。いつか絶対に頂点に立つと決めていたので」