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「阿部詩の練習は120%」「渡名喜にかけた言葉は…」東京五輪で躍進、柔道女子代表を支えた福見コーチが語った“知られざる舞台裏”
posted2021/12/07 17:01
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Shino Seki
2021年も終わろうとしている。
今年のスポーツのトピックと言えば夏の東京五輪。中でも柔道では日本勢の活躍が目立った。5つの金メダルを獲得した男子もさることながら、金4、銀1、銅1のメダルを得た女子も鮮烈な印象を与えた。
その活躍を支えた1人に、増地克之監督のもとでコーチを務めた福見友子がいる。
東京五輪での柔道女子躍進を支えた福見コーチ
2012年ロンドン五輪に出場し5位入賞、2009年世界選手権優勝など48kg級で活躍した福見が、引退ののち柔道女子日本代表コーチに就任したのは2016年10月だった。軽量級を受け持ち、東京五輪では48kg級で銀メダルを獲得した渡名喜風南、52kg級金メダルの阿部詩を担当した。大会への準備を含め、責任を負う立場にいた。
「2人に求めるものはそれぞれ違いました」
両者の置かれている立場は異なっていた。渡名喜の場合、同じ階級に本命視されていたダリア・ビロディド(ウクライナ)がいた。172cmとこの階級では他を圧する高身長を誇る選手だ。渡名喜についてはライバル対策に時間をかけた。
「あれだけの身長でリーチのある選手は、日本なら70kg級以上になってきます。ですから階級がずっと上の選手とも練習しました。ただ怪我に気を付けると、1回の練習で多くはできません。組めて1回か2回。そこで試していく形でした」
ビロディドと当たったのは準決勝だった。渡名喜は、試合開始から優勢に進め、横四方固で打ち破った。
「投げて勝つのは難しいと分かっていたのでどうやってゴールを目指すかを考えました。いちばん徹底していたのは組手の部分。最初から前に出続ける、そこも1つのテーマでした。相手がはまってくれたなと思います」
「阿部詩は練習を120%やらないと満足しない」
金メダルの最有力候補と目されていた阿部の場合は、別のアプローチをとった。
「阿部詩は練習量がすごく多いんですね。ほかの選手なら60か70%で『いい練習ができたな』と思うところを、120%やらないと満足しない。でもそれをやり続けると体が悲鳴をあげます。スケジュール管理を細かく話し合って、いかにしてコンディションを整えて大会に向かわせるかを重点として考えていました」