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「体に悪い酒は飲むな」「筋肉よりも腱」スピードスケート清水宏保が、レスリング金メダルを目指す甥・清水賢亮(22)に伝えた心得
posted2021/12/20 06:00
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
AFLO
レスリング界に、パリ五輪が楽しみなホープが誕生した。10月にノルウェーで行われた世界選手権グレコローマンスタイル63kg級(非五輪階級)で、初出場の清水賢亮(けんすけ)(拓殖大学4年)が銅メダルに輝いた。
1998年長野五輪スピードスケート男子500m金メダリストの清水宏保さんを叔父に持つ“良血レスラー”。「五輪はすごい舞台。口に出すのもおこがましいと思っていたが、明確に意識するようになってきた」と力強く前を見据えている。
柔道とレスリングをやっていた父・孝悦さんの影響で5歳から柔道を始め、小学校5年生の終わり頃からレスリングに転向した。帯広北高1年生だった'15年に世界カデット選手権で5位になり、高3だった'17年には18歳から20歳までが対象の世界ジュニア選手権で日本の男子高校生として初となる銅メダルを獲得した。柔道の基礎が身についており、レスリングでも投げ技が得意。豪快なリフトが最大の武器だ。
宏保さん直伝のメニューで練習
シニアとしての実力がついたのはここ2年くらいだという。大学1年の冬、宏保さん直伝の自転車メニューをもらい、アドバイスを受け始めてから「足の筋肉やスタミナが段違いについて、勝てるようになった」(清水)。スピードスケートの滑走動作を練習に取り入れたことも生かされ、左右の切り返しの際に体幹がぶれなくなった。
宏保さんからは「筋肉よりも腱を鍛えろ」「関節を意識しろ」と教わっているほか、「体に悪い酒は飲むな」などマット外の心得も伝授されている。
初めて出た世界の舞台では、寝技での守備力の弱さを痛感した反面、これまで自分では気づいていなかった攻撃面の長所も分かった。自転車トレや重量級の選手を相手にした練習で下半身が想像以上に強化されていたのだ。
世界選手権では相手をマット外に押し出してポイントを重ねることが多く、「押しの強さと、ポイントを取り切る力も武器になっている」と胸を張る。
63kg級は非五輪階級のため、今後は五輪階級の67kg級に上げる予定。まずはしっかりと戦える体づくりから始めていくつもりだ。「来年から社会人になるので“プロ”の名に恥じないような強いレスラーになりたい。目標は世界チャンピオン」と目を輝かせた。