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Jをめぐる冒険BACK NUMBER
「出発当日になってもeビザが…」「え、あっけなく空港から出られた」コロナ時代のW杯予選アウェイ取材記《オマーン編》
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAtsushi Iio/JFA
posted2021/12/02 17:02
1-0で勝利したオマーン戦。取材者は現地での試合にたどり着くまで、どんなことが起きていたのか
記者席に置いた温度計は35度近くを示していたから、ピッチ上ではおそらく40度を超えていたのではないか。気温0度のモスクワからやって来た本田圭佑はまったく動けなかった。
2度目は14年1月のU-22アジア選手権。リオ五輪出場を目指す手倉森ジャパンの初陣である。中島翔哉の活躍もあってグループステージ突破を決めたものの、イラクに敗れてベスト8で帰国することになった。
「日本からの短期滞在の場合、ビザの必要は……」「え!?」
記憶の中のマスカット国際空港はこぢんまりとして猥雑で、到着ロビーに出るとタクシーの客引きがウヨウヨしているような、いかにも中東の空港だった。
ところが、7年半ぶりとなるマスカット国際空港は、記憶とはまったく異なっていた。きれいで、現代的で、広いのだ。改装工事でも行ったのだろうか。
しばらく歩くと、入国審査の列の手前にアライバルビザ発給のデスクがあった。
まずMさんが窓口の女性とやりとりしたあと、「6リアルですって」と僕に告げてからお金を支払った。続いて僕も「彼女と同じです」と言ってパスポートと合わせて6リアルを差し出した。
すると、窓口の女性は少し考え込んだあと、引き出しから資料を取り出してしばらく眺め、改めて確認してくるではないか。
「あなた、どこから来たんでしたっけ?」
「日本です。6日間の滞在です」
すると、窓口の女性は驚くようなことを告げた。
「日本からの短期滞在の場合、ビザの必要はなかったわ。だから、そちらの女性からいただいたお金も返します。このまま入国審査に向かってください」
……え!?
最大の難関だと思っていたビザ問題は、あっけなく解決した。
なんと、ビザ自体が不要だったのだ。
代表チームの広報担当者や大使館員との長時間のやり取りはいったいなんだったのか……(主にやり取りしていたのはMさんだけれど)。
入国審査もスムーズで、パスポートを預けた10秒後にはスタンプが押されて戻ってきた。
拍子抜けするほどあっけなく外に出られた
ゲートをくぐると、続いてワクチン接種の確認だ。ワクチン接種証明書や陰性証明書は、事前にマスカット国際空港指定のサイトにアップロードを済ませてある。指示されたブースでアップロードを証明する書類を見せると、この関門も一瞬でクリアできた。
コロナ対応の海外旅行保険1カ月分の加入義務があるとも聞いていたけれど、チェックされることもなく、拍子抜けするほどあっけなく外に出られた。到着して1時間かかったかどうか。
到着ロビーにかつてのようなタクシーの客引きはおらず、やはり記憶とは違って、おしゃれなカフェもある。
その後、タクシーの運転手に聞いたところ、空港は2018年に新しく建てられたものだった。どうりできれいなわけだ。ちなみに旧空港は今もLCCの発着港として使用されているらしい。
想定よりはるかに早い21時、コロナ禍ゆえに奮発した4つ星ホテルに到着した。その約1時間後、時差ボケに悩まされない体質の僕は、翌日からの代表チームの取材に備えてダブルベッドに飛び込んだ。<続く>
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。