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メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
「なんとしても力になりたい」大谷翔平が重度の心臓病と闘う“翔平ちゃん”を見舞いに行った理由
text by
川崎静葉Shizuha Kawasaki
photograph byKYODO
posted2021/11/24 11:00
2019年1月、心臓移植手術を待つ川崎翔平ちゃん(中央)を励まそうと大阪府内の病院を訪れた大谷。面会の時間は1時間近くに及んだ
命を支えるベルリンハートの電池は30分しかもたない
この日は土曜日で国立循環器病研究センターも一般の診療などはお休みでしたが、さすがに大谷選手が正面玄関から入ってきたら大騒ぎになってしまうでしょう。ふだんはあまり使っていない入り口を使ってもらうことにしました。
大谷選手は飛行機で来ることになっていました。ほかに用事があるとか、たまたま関西方面にいるとかではなく、“翔平に会うためだけ”に、大阪に来てくださるというのです。
「本当に現実のことなのだろうか」「どんな人なのだろうか」、いろいろ考えながら朝から掃除です。大谷選手に気持ちよく入ってもらえるように、私と救う会のメンバーたちでセンターの周囲や入口あたりをキレイにしました。
センターにはできるだけご迷惑をかけないつもりでした。しかし、主治医の坂口平馬先生や、担当の看護師さん、チャイルド・ライフ・スペシャリストさん(※病院生活における子供の精神的負担を軽減するための専門家)、みなさんが休日出勤です。
それに大谷選手と翔平が面会するためのお部屋も用意してくれました。翔平の命を支えているベルリンハートの電池は30分しかもちません。万が一停電がおこっても、センターで自家発電した電気を受けられる部屋が必要だったからです。
実物の大谷選手は“優しいお兄さん”という感じだった
いま振り返ってみても、夢のような1時間でした。
カシャカシャカシャ! 大谷選手がお部屋に入ってきた瞬間、取材に来ていたカメラマンさんたちのシャッター音がいっせいに響きます。
身長は193cmもあります。メジャーリーガーですし、変な言い方ですが、体もゴツゴツしていて、威圧感も受けるのではないかと想像していたのです。
でもスーツ姿だったせいもあるのかもしれませんが、実物の大谷選手は“優しいお兄さん”という感じで、すごく柔らかな、こちらが安心してしまうような雰囲気だったのです。
ニコニコと笑顔を浮かべながら、翔平に近づいてきます。