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リーガ・エスパニョーラ最前線BACK NUMBER
<白星発進も…> 固定給は半額以下、驚きのダニ・アウベス復帰…シャビのバルサ監督就任は「勇敢な行為」なのか?
posted2021/11/23 06:00
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph by
Getty Images
バルセロナを指揮することを、シャビは何年も前から望んでいた。サポーターも求めていた。が、ラポルタ会長は違った。
「もう少し経験を積んでからだ。いまのバルサには経験を積んだ監督が必要だ。(初めて会長に選ばれた2003年に)ライカールトを選んだのもそのためだった。グアルディオラはライカールトが作った基盤を引き継いだんだ」
ラポルタ会長がこう語ったのは、会長選挙前の今年2月のこと。
シャビが、対立候補に抱き込まれていたことも癇に障っていたようだが、5月になってクーマンの後釜を探したときにも「まだ際立った存在ではない」と言って、彼にチームを託そうとしなかった。
良いサッカーをすれば結果はついてくるという共通認識
今回、そんなラポルタ会長の気が変わったのは、バルセロナのプロサッカー部門を司るマテウ・アレマニーたち側近に説得されたからである。
同部門の関係者いわく、「いまチームを委ねられるのは、シャビだけ。このクラブを熟知しているし、立て直しに多少時間がかかろうともサポーターは待ってくれる」。
今季クーマンのバルサ最大の問題はアイデンティティを失ったことだった。クライフが根付かせ、グアルディオラが磨き上げて現代化したバルサのサッカーができていれば、「事態が好転する可能性はある」とメディアもサポーターも信じていたかもしれない。
良いサッカー(=バルサのサッカー)をすれば結果はついてくるというのが、バルサを取り巻く人々の共通認識なのだ。
その点、シャビなら心配ない。
さらに、史上最強期のシンボルの1人であるシャビの監督就任によって、メッシ退団とともに低下したバルサのブランド力が回復することも期待できる。
それは、楽天に代わる来季以降の胸スポンサーを探しているクラブにとっては、非常に重要なポイントである。またラポルタ自身も、メッシとの再契約を反故にして落とした信用をいくらか取り戻せる。
「もっと良い状況下で監督を始めてもらいたかった」
しかしシャビの側に立って考えると、念願が叶うチャンスではあっても、タイミングは最悪と言える。
11月6日のセルタ戦までのリーガ12試合でチームが得た勝点はわずか17。近年では2002-03シーズンに次いで少なく、選手の心理状態は決してよろしくないうえ、負傷者が続出している。
選手たちはピークを過ぎたベテランと若手ばかりで、脂の乗った層は極めて薄い。けれど、財政難のクラブに大型補強は要求できない。
その一方で、CLのグループステージは何が何でも突破しなければならないし、リーガの順位を上げて来季のCL出場権を確保しなければならない。そうしなければ、財政難を抜け出す可能性が、より低くなってしまう。