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〈日本シリーズで“履正社出身”対決〉“意欲がなかった”山田哲人をT-岡田が変えた 恩師・岡田監督「二人に対する指導で共通していたのは…」
posted2021/11/20 11:04
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
JIJI PRESS
かつてホームランキングを獲得したこともある“両雄”が日本シリーズで激突する。
ヤクルト・山田哲人、オリックス・T-岡田。
意外かもしれないが、2010年にT-岡田(パ・リーグ)、15年に山田(セ・リーグ)と、両リーグのホームランキングを同一高校出身選手が取ったのはこの二人が初めてなのだ。
「二人が日本シリーズで対戦することは一生ないやろなと思っていましたんで、実現してよかったですね」
そう語るのは彼らの恩師にあたる履正社の岡田龍生監督だ。
履正社を離れる最後の年に“両雄”が対決
長く同校の監督を務め、1997年の夏の初出場を皮切りに春9回、夏4回の甲子園出場。19年夏には初の全国制覇を達成している。今年度限りで履正社の監督職を退き、来年からは東洋大姫路で指揮をとることが決定している。
履正社を離れる最後の年に、この対決が実現するとは、岡田監督からすれば、様々な想いが交差するだろう。
実は、T-岡田と山田の二人には浅からぬつながりがある。
09年のことだ。
高校2年生だった山田は大阪大会の準々決勝で敗れ、翌春のセンバツ出場を逃していた。プロ入りを切望していたものの、当時の山田はそれほど高い意識を持って取り組んでいるタイプではなかった。
かつての山田哲人は「あまり意欲がなかった」
岡田監督は、この頃の山田についてこう回想する。
「いい能力を持っているのにもったいないなっていう話をコーチたちとしていたんです。もちろん、人に迷惑をかけるとかそういうことはしないんですけど、あまり意欲がなかったと言いますか。モチベーションを上げようといろんなことをしましたけど、山田には響かなかった。そんな程度の気持ちでやるんやったら、公立高校に行けばよかったのにと思いました。野球で飯を食うという意思は感じませんでしたね」
指導者の誰もが歯痒い気持ちを抱いていたのが山田だった。
いい性格をしているし、能力も持っている。なにせ、入学した直後の1年夏の大阪大会からベンチ入りしているほど期待を受けた選手だった。しかし、意欲が足らなかった。
そんな折、山田にとってアシストとなったのが、この数年前よりプロ・アマ規定の一部が改定されていたことだった。