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〈日本シリーズで“履正社出身”対決〉“意欲がなかった”山田哲人をT-岡田が変えた 恩師・岡田監督「二人に対する指導で共通していたのは…」
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byJIJI PRESS
posted2021/11/20 11:04
履正社→ホームランキング経験者のT-岡田、山田哲人が日本シリーズで激突。恩師・岡田龍生監督に去来する思いとは――
かつて、プロ野球選手が現役の高校球児と接触することは禁止されていた。母校であっても一緒に汗を流すことすらできず、せっかくの財産が生かされないということが野球界では当たり前に起きていた。常識で考えれば、いかにも馬鹿げたルールなのだが、古い体質のルールが野球界にはあった。
09年の冬、選抜大会を逃して失意の中にあった履正社のグラウンドに現れたのが、T-岡田だった。ホームランキングを取る前の年のことで、ちょうど手応えを掴み始めていた時だったのだ。
山田を変えたT-岡田との出会い
岡田監督は言う。
「山田が進路相談で『プロに行きたい』と言ってきたのですが、僕はその段階では、プロに行くには意識が足らないと思っていました。ただその頃、プロ野球選手が母校で練習をしていいということになっていたので、同じグラウンドで汗を流していたプロに行った先輩から話を聞けばいい機会になるんじゃないかと思ったんですよ。山田には『プロの話を聞いてみたらどうや』ということでT(-岡田)からいろんな話をしてもらったんですよね。それから山田は練習を意欲的にやり出したんで、そういう面での影響力は大きかったです」
秋の大会は山田が打てずに負けていた。そんな折に現れた先輩の言葉は重かった。山田が練習の1球も無駄にしなくなったのはその頃だった。
山田は当時、こう語っている。
「練習試合とか相手が強くない試合では活躍できるんですが、強豪になると全く駄目でした。実際、ちびっていたというか、勝負弱かった。2年秋まで、あまり注目されなかったのも、そこだと思います。なんとかしたいと、この時に思うようになりました。岡田さんからは一つひとつを大事にして、野球を考えて取り組めと言われました。日ごろの積み重ねが大事と言われたんです。それまでは打って、アウトと思ったら、ゆっくり走っていたんですけど、何事も全力でやるようになりました」