フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
〈独占〉村元哉中&高橋大輔が順調な国際大会デビュー…コーチ2人がここだけに明かす“強さの秘密”とは?「まだ、ほんの始まりです」
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byAsami Enomoto
posted2021/11/18 11:03
国際デビューとなったNHK杯にて6位入賞を果たした村元&高橋(SPでの演技)
リズムダンスの新衣装では、村元は巫女風に髪を結わえてエキゾチックな赤い衣装。忍者風にも見える高橋の黒い衣装では、ノースリーブから筋肉が盛り上がった高橋の腕が強調されていた。
この体形の変化は、フロリダで週に3回ジムに通って、パーソナルトレーナーの指導を受けている成果だ。またシングル当時よりも体重を増やすために、食事の回数も増やしたのだという。筆者が9月にリンク取材でフロリダを訪れた際も、高橋はセッションの合間にリンクの外のベンチに腰掛けて、暖かい日差しを浴びながら自分で用意したというミニお弁当を食べていた。
「ダイスケは氷の上で、大きく見えると思わない?」
さらにズエワコーチは、こう指摘した。
「ダイスケは氷の上で、大きく見えると思わない?」
高橋のアイスダンス転向が発表された当初、二人の身長の差があまり大きくないことが、懸念されていた。だがズエワコーチが言うように、一回りも二回りもがっしりした高橋は大きく、たくましく見える。現在のアイスダンスで要求される複雑なリフトもマスターし、今季きっちり安定度を上げてきた。
もちろんジムに通っているのは、高橋だけではない。村元も一緒に、基本的に高橋と同じプログラムをこなしている。リフトというのは男性だけの力で上げるものではなくタイミング、女性の瞬発力や体幹の強さも重要な鍵となる。アイスダンスの女子には、鞭のようにしなる柔軟性のある強い体が要求されるのだ。子供の頃からバレエをやり、シングル時代は3回転も跳んでいた村元の身体能力は、高橋とよくバランスが取れているように見えた。
世界チャンピオンと同じだった基礎技術点
今回NHK杯で優勝した現世界チャンピオン、ロシアのビクトリア・シニツィナ&ニキータ・カツァラポフと、6位だった彼らの総合の点差は35ポイント弱。だがズエワコーチはこう指摘する。
「リズムダンスでシニツィナ&カツァラポフの基礎技術点と、カナとダイスケのそれが0.01しか差がないことに気がついた?」
前者が32.65、村元たちが32.64。これは彼らが演じたリフト、ステップ、ツイズルなどにレベルによってポイントがついた基礎点の合計である。これに各ジャッジが出来栄えによってマイナス5からプラス5までを加え、さらにスケーティング技術や音楽表現などの演技構成点が足されて得点が算出される。
要するに彼らは技の精密さはまだこれからだが、世界チャンピオンと同じ難易度のエレメンツをこなしているのである。二人の身体能力の高さの表れだ。