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“ミランのレジェンド” シェフチェンコはなぜアメリカ資本のジェノア新監督に就任したのか?<今季1勝、問題山積の古豪>
posted2021/11/17 17:00
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Getty Images
“ウクライナの矢”アンドリー・シェフチェンコが、ジェノアの新監督に就任した。
2000年代に欧州を席巻した名ストライカーのセリエA帰還に、ジェノアっ子だけでなくカルチョ・ファンは興奮を隠せない。
11月10日、就任会見に臨んだシェフチェンコは、厳粛な面持ちで所信を述べた。
「我々にとって差し迫った何よりの目標は、来シーズンもセリエAを戦うことです。残留のためにあらゆる手を尽くすことを私はファンに約束します」
今回の招聘には新経営陣の意向が強く働く
1999年から延べ8シーズンを過ごしたミランで、通算175ゴールを上げた稀代のトップスコアラー。どんな体勢からでも蹴り脚を振り抜くシェフチェンコのシュートはいつでも鋭く、力強かった。
2002-03シーズンの欧州チャンピオンズリーグ決勝戦で、ユベントスGKジャンルイジ・ブッフォンを相手に勝負を決めたPKが忘れられないミラニスタも多いことだろう。
12年の夏に古巣ディナモ・キエフで現役引退後、一時は政界を目指すとも言われたが、時を置いて16年2月にウクライナ代表のチームスタッフとなり、指導者の道へ。EURO2016後に代表監督へ正式就任。今夏のEURO2020でウクライナを同国史上初のベスト8に導くも辞任し、その去就が注目されていた。
今回の就任劇が、やや唐突であることは否めない。
イタリア最古の歴史を持つ古豪とはいえ、ジェノアと04年度のバロンドール受賞者との接点はこれまでほぼ皆無で、突然降って湧いたようなビッグネーム着任にジェノアっ子は今なお夢見心地なのだ。
今季のジェノアは開幕から低迷が続いている。昨季の残留成功によりそのまま留任したダビデ・バッラルディーニ監督は、12試合を終えて白星を1つしかあげられず、勝点9の17位。もはや挽回は不可能と判断され、11月6日限りで解任された。
当初、後任候補は前ユベントス監督のアンドレア・ピルロが有力とされていたが、急転直下でベンチに座ることになったのはシェフチェンコだった。今回の招聘には新経営陣の意向が強く働いている。
新オーナーはスクデット獲得を公言
今年の9月下旬、ジェノアのクラブ株の99.9%が米国ニューヨークとマイアミに本拠に置く持ち株会社『777パートナーズ』に譲渡されることが明らかになった。
同社の基幹ビジネスは旅客機リース事業で、現在では金融業や南米スポーツ界の放映権事業なども幅広く手掛けている。北イタリアの玩具メーカー『ジョキ・プレツィオージ』社の社長エンリコ・プレツィオージが、2003年の夏以来18年余に渡って大事に抱えてきた老舗クラブは、2015年創業のアメリカ資本の手に渡ったのだ。