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投手・大谷翔平が10勝目前で“登板断念”した真相…監督・GM・本人も納得のシーズンだった「来年、また別のレベルに到達する」
posted2021/10/03 06:01
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph by
Getty Images
シーズン最終戦を待たずして、投手・大谷翔平の2021年シーズンは終わった。今季の成績は23試合に先発し130回1/3を投げ、9勝2敗、防御率3.18。奪三振は156にもなった。
最後の登板となった9月26日のマリナーズ戦から中6日を空ければ、最終戦である3日(日本時間4日)のマリナーズ戦に登板は可能だった。だが、あえて、大谷も球団首脳もその選択をしなかった。その理由をマドン監督は説明した。
「彼がシャットダウンする時だと感じていたので、そうすることにした。彼の最後の2登板は本当に力強かった。今年は充分に成し遂げたので投球しないのが一番いいのかもしれない」
ペリー・ミナシアンGMも続けた。
「彼に聞いたら、彼も投手、打者として多くのことをやり遂げたと感じていたようだ。残りシーズンで彼が見せなければいけないことはもう何もない。今年の躍進は充分に見てとれた」
ふたりの言葉からは、シャットダウンは大谷自身の意思であったことが窺える。ベーブ・ルース以来、103年ぶりの「二桁勝利&二桁本塁打」まであと1勝という状況で、投げる機会がありながら、その登板を断念したことは残念だが、この判断は賢明だと感じる。米国の野球文化で考えれば、ごく当たり前のこととも言えた。
投球回数130回1/3は上出来
大谷がトミー・ジョン手術を受けたのは18年10月1日だった。20年シーズンの投手復帰を目指し、実際にマウンドへ戻った。だが、実戦での調整不足がたたり、右肘の不調を訴え、投手として残した成績は、2試合、0勝1敗、防御率37.80。投球回数はわずか1回2/3だった。
メジャーならずとも、トミー・ジョン手術を経験すれば、復帰への過程では投球回数に制限がつく。年間70~80回から始まり120~130回、150~160回と段階を踏みながら上げていくことが一般的だ。
大谷も昨季、順調なシーズンを送れば70~80回は投げただろう。しかし、新型コロナウイルスの影響でスプリングトレーニングは3月上旬に中断され、シーズンが始まったのは7月下旬だった。その間、実戦調整の場はなく、ぶっつけ本番でシーズンへ突入したことが災いし、わずか2試合、1回2/3の投球回で右肘に不調を訴えてしまった。