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《エリ女》直近10年で“最低人気V”は7番人気のアノ馬だった…大ベテラン柴田善臣が強豪たちを破り「小さくガッツポーズ」できたワケ
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph byAFLO
posted2021/11/13 17:02
2012年のエリザベス女王杯、ヴィルシーナ(左)ら強豪をおさえ、7番人気ながら優勝を果たしたレインボーダリアと柴田善臣
エリザベス女王杯当日は雨
こうして迎えた競馬当日は1日中雨が降っていた。朝から降り続け、午後には一段と強くなる時間帯もあった。決戦時の馬場状態は“重”。しかし、エリザベス女王杯の約1時間前に芝のレースに騎乗した柴田善騎手は、それほど悪い馬場とは感じていなかった。
「黄菊賞(エリザベス女王杯の2つ前のレース)は終始インコースで競馬をしたけど、朝は良馬場だったせいか、意外と悪い馬場とは思いませんでした」
もっとも、道悪が嫌だとも考えていなかった事が続く言葉から分かった。
「北海道の洋芝でも実績があったので、時計のかかる馬場は良いと思えました。だから正直、馬場状態に関してはそれほど心配していませんでした」
ゲート順は16頭立ての15番。比較的綺麗なコースを選んで走れる枠順だと考えていた。
「7番人気」の馬を導いたベテラン騎手の手綱さばき
運命のゲートが開くと、レインボーダリアは好スタートを決めた。
「モタモタして序盤から脚を使うような形は嫌だったので、発馬を決められたのは良かったです」
前半1000メートルは62秒4のラップ。重馬場といえGIレースとしては遅い流れだ。
「調教に乗った時は、結構行きたがる感じがありました。でも、レースではしっかりと折り合っていました。周囲に馬がいるせいか、掛からずにリラックスして走ってくれました」
向こう正面で外からエリンコートが番手を上げていったが、柴田善騎手はパートナーにまだゴーサインを送らなかった。
「追いかけて上がっていけば末脚を無くすと思い、我慢しました。ふた呼吸くらい置いてから『少し行こうか?』という感じで合図を送るとすかさず反応してくれました」
4コーナーを絶好の手応えで上がってきた時、ベテランジョッキーは次のように思ったと後に語っている。
「これで後ろの馬に差されたら仕方ないと思えるくらい抜群の手応えで上がってくれました。先行勢の手応えも見えていたので『この感じなら勝てる!!』と結構早い段階で思えました」
直線に向いた柴田善騎手の右前では早目に先頭に立ったオールザットジャズと、すぐ横で一緒に上がっていこうとするヴィルシーナが見えた。しかし、明らかにレインボーダリアの脚が優っていた。ヴィルシーナをかわし先頭に立つと、ゴール直前ではピクシープリンセスが追い込んで来たがその時には既に勝負がついていた。柴田善騎手にいざなわれたレインボーダリアがヴィルシーナにクビ差先着して先頭でゴールへ飛び込んだ。