- #1
- #2
Jをめぐる冒険BACK NUMBER
関東1部(J5相当)のクラブが、あと5年で世界一? クリアソン新宿の“勝てる戦略”は「成功のモデルケース」になるかもしれない
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byCriacao Shinjuku
posted2021/11/11 11:03
関東リーグ1部優勝を決めたクリアソン新宿。11月12日からはJFL昇格を懸けて「全国地域サッカーチャンピオンズリーグ」の戦いに挑む
クリアソン新宿は壮大な目標を掲げている。
2026年に世界一になること――。
・2021年にJFLに昇格
・2022年にJ3に昇格
・2023年にJ2に昇格
・2024年にJ1に昇格
・2025年にAFCチャンピオンズリーグ(ACL)の出場権を獲得
・2026年にACLを制して、クラブW杯で優勝
「1年1年、そのカテゴリーで最上位を目指すことを僕らはやり続ける。その結果、2026年に世界一になる。関東リーグ1部で1年足踏みしたので、当初設定していた2025年から2026年に修正したんですけど、その目標は大事にしたい一丁目一番地ですね」
自分たちの取り組みの価値を広げるためには、カテゴリーを上げることで拡声器の音量を上げていく必要があるからだ。
と同時に、サッカーで勝つための戦略を、そのまま会社とクラブの理念に落とし込んでいるという自信もある。
「いろいろなクラブの方と話していると、勝ち負けやいい選手を補強してチームを強くすることを重視しすぎているんじゃないかと。勝ち負けと同じくらい大事なものがあるし、うまい選手を獲得する以外にもチームを強くする方法がある。サッカーはミスが起こりやすいスポーツなので、いろんなことに興味や関心を持てて、気づける人間のほうが状況判断に優れているんじゃないか、人を大事にできる人間のほうが窮地で力を発揮できるんじゃないかと。チーム内の信頼関係や組織の心理面の醸成も含めて、そういう戦略でいくと世界一が取れるんじゃないかと思っています」
そう語った丸山はにっこり笑って、こう続けた。
「そんなクラブが世界一になれば、地域の人たちも、ステークホルダーの方々もハッピーだし、何より自分たちもハッピーじゃないですか」
サッカー界では突飛な雇用形態も、それが最も勝てる組織のあり方だと信じているからチャレンジするのだ。
「もちろん、綺麗事を疑う瞬間もありますよ。目標が達成できないときには、もっとこういう要素が必要なんじゃないかって、常にアップデートしています。ただ、綺麗事を捨てたら、人間、なんのために生きているのか分からない。生きているからには綺麗事を目指すのは当たり前だと思うんです。自分の限られた時間を投資するなら、最も価値があり、最もいろんな人を幸せにするものに投資したい。そこがブレたら、選手も付いてきてくれないでしょう」
世界一と言うと、あまりに遠い目標でピンと来ないかもしれないが、目の前の試合に勝つ確率は決して低くない。それを次々とクリアして、近づいていくだけの話なのだ。
「どんどん成し遂げていくと、どんどん近づいていって、確率も上がっていく。僕らはそこに向けての戦略を持っているつもりだし、その戦略に乗っているので、難しいも何も、これで行くしかないんです(笑)。しかも、それなりに筋がいいと思っています」
関東リーグのレベルで何を言っているんだ、と思うかもしれない。
しかし、関東リーグより下のカテゴリーに属するチームにとって、クリアソン新宿の戦略は成功のモデルケースになっている。
なにせ昇格2年目にして「地獄」と称される激戦の関東リーグ1部を制してしまったのだから。それも怒涛の11連勝を飾って――。
「地獄」を勝ち抜いた先にある「地獄」
リーグ戦終了から約1カ月後、クリアソン新宿はネクストステージを懸けた戦いに臨む。
JFL昇格につながる全国地域サッカーチャンピオンズリーグである。
関東リーグは実力伯仲という意味で「地獄」と呼ばれるが、かつて「地決」と略されていた地域CLはスケジュールが過酷なために「地獄」と称される。
1次ラウンドは3日間で3連戦が組まれ、10日後に行われる決勝ラウンドは中1日の試合間隔で3試合を戦う。これでも以前より緩和された日程なのだ。
全国9地域を勝ち抜いてきた12チームの中でJFLに昇格できるのは、0~2チーム。地域CLで上位2チームに入っても、JFL下位との入れ替え戦に敗れれば昇格できない。
コバルトーレ女川、おこしやす京都AC、FCバレイン下関と戦うクリアソン新宿の1次ラウンドは、11月12日に岩手のいわぎんスタジアムで開幕する。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。