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「クマ、サル、イノシシなんかもときどき見る」山育ちのドラフト1位・翁田大勢は“ジャイアンツ向き”のメンタリティー
text by
菊地高弘Takahiro Kikuchi
photograph byTakahiro Kikuchi
posted2021/11/04 11:02
巨人からドラフト1位指名を受けた翁田大勢は、ジャイアンツでもマイペースを貫けるか――
こうした言葉や思考を垣間見る限り、翁田は巨人向きの選手なのかもしれない。巨人は全国にファンがいる人気チームであり、メディアの注目度も高い。雑音が大きく聞こえる環境だからこそ、周囲に流されず「自分は自分」と動じないメンタリティーが求められる。
先発か、リリーフか…「期待に添えるよう練習するだけ」
ただし、気になる点もある。翁田本人と球団の間で、投手適性について認識の乖離が見られるのだ。
ドラフト会議当日、指名直後の会見で翁田は「自分はリリーフ向きだと思う」と発言している。しかし、巨人の原辰徳監督は「先発完投というスタミナも十分ある」「ジャイアンツのエースになってもらいたい」と真逆のコメントをしている。
チーム事情としては、シーズン終盤に中4日または中5日でローテーションを回した先発陣も、「マシンガン継投」と呼ばれた矢継ぎ早の投手起用で疲労が目立つリリーフ陣もコマ不足は否めない。
翁田が自身をリリーフ向きと考えた要因の一つに、関西国際大OBで投手としてタイプの近い益田直也(ロッテ)がリリーフとして成功している点がある。大学時代に益田を指導した野村昌裕コーチから、益田がやっていたトレーニングを教わり、取り入れたこともある。
だが、10月13日に巨人の大塚淳弘球団副代表、水野雄仁スカウト部長らに指名挨拶を受けた際、翁田はあらためて「先発投手として勝負してほしい」という要望を受けた。翁田は戸惑うことなく、その言葉を前向きに受け止めている。
「自分はプロになったら、野球をしてお金をもらって生活する立場になります。求められるもの以上のものを残したいですし、先発として期待していただけるのであればうれしいです。期待に添えるよう練習するだけです」
翁田は本人の考え通りリリーフ向きなのか、それとも巨人編成陣の慧眼なのか。プロ入り後にその答えは出る。
「他のドラ1に負けない活躍をしないといけない」
最後に野球ファンに向けて伝えたいことはあるかと聞くと、翁田は少し考えてから意を決して口を開いた。
「自分は他のドラ1選手に比べて目立った実績はないんですけど、プロに入ってからが勝負だと思います。他のドラ1に負けない活躍をしないといけないと思っているので、応援をお願いします。自分のプレーする姿や取り組みで、ファンの人を魅了できるピッチャーになりたいです」
多可町で野性的に育った剛腕は、読売ジャイアンツという伝統あるチームでもマイペースを貫けるか。その戦いは、巨人の近未来の行方をも左右する。(前編よりつづく)