プロ野球PRESSBACK NUMBER
「クマ、サル、イノシシなんかもときどき見る」山育ちのドラフト1位・翁田大勢は“ジャイアンツ向き”のメンタリティー
posted2021/11/04 11:02
text by
菊地高弘Takahiro Kikuchi
photograph by
Takahiro Kikuchi
地元について尋ねると、翁田大勢は急に饒舌になった。
「野生のシカやウサギはしょっちゅう見ますよ。クマ、サル、イノシシなんかはときどきですね」
関西国際大から巨人にドラフト1位指名された剛腕は、兵庫県多可町(たかちょう)の出身。山あいの自然豊かな環境で翁田は育まれた。
バスの本数は限られ、最寄りの鉄道駅もない。それでも、「電車に乗らないと行けない遊びはしてなかったので、あまり関係なかったですね」と翁田は言う。どんな遊びをしていたのか聞くと、「山の中でかくれんぼしたり、川に入って泳いで魚を獲ったり」という答え。山で道に迷ったら、「とりあえず下り方面に行けば大丈夫」という知恵もつけた。下ればどこかしら集落があるからだ。
「西脇工の翁田」と言えば兄の勝基
小学1年で野球を始め、中学は硬式クラブの氷上ボーイズへ。高校は西脇工に進学した。高校野球ファンにとっては「西脇工の翁田」と言えば、翁田大勢以上に翁田勝基の名前が馴染み深いはずだ。2013年夏の兵庫大会で7試合63回1/3を投げ抜き、西脇工を甲子園初出場に導いたエース。勝基は大勢の4歳上の兄である。
勝基と大勢は小中高と同じチームでプレーし、高校時代の投球フォームは周囲から「さすが兄弟だね」と言われるほどよく似ていたという。
兄の背中を追った野球人生、とまとめられればいかにも収まりがいいだろう。だが、いくら話を聞いても大勢からはそんなウェットな言葉は出てこない。かといって、偉大な兄に反発しているわけでもないようだ。
大勢に兄弟仲について聞くと、実に微妙な答えが返ってきた。
「あんまり仲よくないですけど、お互いに気にしながら、そんなに口にしない感じですかね。姉(あかり/元天満屋の陸上選手)とはめちゃくちゃ仲がいいんですけど」
西脇工に進学した理由を聞くと、大勢は「本当は神戸国際に行きたかったんです」と裏話を打ち明けた。