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「これだけはしろよと言うたことさえ、できひんのが今の子やね」立浪和義が引退直後に語っていた“若い選手への喝”
text by
橋本清Kiyoshi Hashimoto
photograph byKYODO
posted2021/11/03 11:02
中日の新監督に就任した立浪和義氏
「これだけはしろよと言うたことさえ、できひんのが今の子やね」
――バット振っとるかと聞いても、笑ってごまかす。
「別に俺らが困るわけではない。でも、せっかくこの世界に入れて……野球選手になりたくてもなれへん人がいっぱいおるのにね」
――そのまじめさは昔からやな。考えたら子供の頃から場面場面で無駄なく適切なことを言う。当を得てるんだよね、発言にしても行動にしても。
「当を得た魚やがな」
守備よりも打撃「最後までこだわった」
――まあ、こういう要らないところのぼそっていうのもあるんやけどね(笑)。そんなタッさんが野球で一番こだわったところはどこ。
「走れるときは盗塁にもこだわったし、守備はショート、セカンドにこだわった。ただ、サードはバッターに近くて、怖くて仕方なかったけどね。怖いというか危ない。で、打つことは最後までこだわった」
――1年目から開幕スタメンやったけど、当時は守備が買われてたんだよな。
「もちろん守備で入ったけど、こだわってたのはバッティング。守備はあまり好きじゃなかったしね。守ってるなら打ってたいタイプ。結果的に見られる成績が残ってるのはバッティングだけやし。守備はショート、セカンド、レフト、サードって転々とした」
――487本のプロ野球記録を持ってる二塁打には、やっぱり強いこだわりがあったの。
「二塁打は450本に近づいたときに、あと数本で福本豊さん(449本)を抜くと記者の方に教えられて。それまでは何の意識もなかった。ただ、自分のバッティングスタイルとして、ちょこちょこ当てるのが嫌やった。実際にホームラン30本打てるかと言ったら打てない。最高で16本。でも、来たボールは振り切りたいという気持ちでやってたから、二塁打が多かったんやろね。時にはポテンもあるけど、左中間右中間か一塁線三塁線抜かないといけない。いい当たりじゃないと二塁打にならないから、自分の調子のバロメーターでもあったな」
「いいユニフォームの脱ぎ方できたと思う」
――フルスイングやったな、いつも。とうとう現役を離れて、最近はどんな日々を過ごしてるの。