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<現役最終戦に秘めた思い(21)>上原浩治「原監督から直接聞きたかった言葉」
posted2021/11/03 07:01
text by
鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph by
AFLO
米メジャー9年間を経て、巨人に復帰して2年目。5月のファーム戦、この日も理想からは程遠い投球に終わると、数日後に一本の電話をかけた。
2019.5.3
イースタン・リーグ
6回戦
成績
巨人 8x-7 ロッテ(延長11回)
勝 鍬原(2勝2敗)
敗 成田(1勝1敗)
◇
多摩丘陵の上に広がるジャイアンツ球場は春の陽光に照らされていた。外野の芝生席に人影はなく、内野スタンドだけが埋まっていた。二軍戦特有の開放感が漂っていた。
5月3日、イースタン・リーグの千葉ロッテマリーンズ戦。スタンドの空気が変わったのは7回裏の巨人の攻撃中だった。ライトポール後方のブルペンで背番号19をつけた投手がピッチング練習を始めたのだ。
上原浩治。かつてのエースであり、米大リーグでワールドシリーズを制した男は前年から古巣に戻っていた。
巨人の攻撃が終わると、上原はブルペンを出てきた。ところどころ色の違う芝生を踏んで、8回表のマウンドに向かって歩いてくる。二軍戦のチケットで上原を見られる幸運が、観衆のざわめきを大きくした。
おそらくは誰ひとり、このマウンドが彼の最後になるとは想像していなかった。上原もそうだった。ただひとつだけ、本人には人知れず秘めてきた覚悟があった。
《このシーズンを最後にしようと決めていたんです。優勝の力になって終わろうと。そのために、2月のキャンプから3カ月間が勝負だと考えていました》