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[MLB時代の同僚投手が語る]斎藤隆「“怪物”は常にバージョンアップを図っていた」
posted2021/11/06 07:04
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
AFLO
2009年、ドジャースからレッドソックスに移籍して初めて松坂大輔とチームメイトになりました。年齢的には僕が先輩ですが、とにかく大輔は「スーパースター」なわけです。僕にとってはベイスターズ優勝ふくめ“神奈川の年”だった'98年の横浜高校の時から日本中が知っているストーリーが紡がれている。どれだけスポットライトを浴びても動じない雰囲気は際立っていましたね。
実は'09年は、僕と大輔にとって厳しいシーズンでした。僕自身は、前半戦はリーグや役割が変わったことでアジャストメントしなければならないことが多く、結果が出せませんでした。大輔はWBCから休みなく投げ続けた年で、シーズン中は12試合の先発にとどまりました。
投げていればつらい試合もあります。ホームランも打たれれば、負け投手になることもある。でも、大輔はケロッとしている。先発投手というのは仕事を続けるうえで、気持ちの切り替えがすごく大切なんです。動じないタイプだとは知っていましたが、いつでも堂々としている姿勢を見た時に「さすが怪物」と思いました。
それとボストンはファンからの視線も厳しいんです。結果が出ない時、ファンが僕に向かって文句を言ってきたんですよ。ドジャースではあり得ないことだったので、ちょっとショックを受けたほどです。大輔の場合は……言うまでもないですよね。年俸も高いですし、よりファンの視線も厳しく、きっと彼の耳にも届いていたことでしょう。でも、彼はそうしたことにも動じないメンタルの強さがありました。それは先天的なものなのか、それとも大舞台をたくさん経験して得たものなのか分かりませんが、いずれにしても注目されることで人間的な成長が図られたに違いありません。