プレミアリーグの時間BACK NUMBER
ユナイテッド粉砕の陰のマン・オブ・ザ・マッチは“偽9番” クロップも絶賛するフィルミーノの「異常」なパフォーマンス
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2021/10/31 17:03
好調サラーの活躍に隠れがちだが、フィルミーノのパフォーマンスこそがリバプールの躍進を支えている
ここでも中盤までポジションを下げ、やや後方にいたマクトミネイ、守備に転じようと動き出していた相手FWメイソン・グリーンウッドの注意を自身に向けさせることにより、パスの出し手と受け手の双方に仕事をさせやすくした。
最も怖いサラーが完全にノーマークに
38分の3点目はペナルティーエリアの縁からジョタのお膳立てでシュートを狙ったのもサラーなら、ブロック後にいち早く2度目のチャンスを予期していたのもサラーだった。こぼれ球を折り返したケイタは、そのサラーに相手DF陣の警戒心が向いていたからこそ、ボックス内でノーマークになってもいた。
しかしながら、そもそもサラーに最初のシュートチャンスが訪れたのはフィルミーノのおかげだ。ワンフェーズ前の段階で、相手のクリアボールがCBイブラヒマ・コナテの頭を経て、右SBトレント・アレクサンダー・アーノルドに渡ると、フィルミーノは手を挙げてパスを要求しながら右へと開いた。
そして実際にタッチライン沿いにパスが届くと、前線の味方とパスを交わしながら相手2ボランチの間を抜けて中央へ切り込み、ジョタにボールを預けたのだった。
前半ロスタイムに生まれたサラーの2点目では、“真9番”ばりのポストプレーでタメを作り、自ら相手4バック全員の注意を引き付けている。左サイドに開いたジョタからのパスを胸でトラップしたのはマグワイアとフレッジの間のスペース。相手CBに後ろから手を掛けられてバランスを崩しながらもボールをキープし、アンダーラップで上がって来たロバートソンへヒールで繋いだ。
その間、ユナイテッドのDFたちの目は、フィルミーノの足下にあったボールに釘付け。そのためジョタ経由でラストパスが出たボックス内の右サイドでは、最も怖いサラーが完全にノーマークになっていた。
「キラーパス」を生んだ“フィルミーノ・スペシャル”
後半に入った50分、サラーのハットリックによるチーム5点目を呼んだのは、ヘンダーソンの右足アウトサイドから放たれた「キラーパス」の一言に尽きるようだが、あえて“フィルミーノ・スペシャル”というもう一言を加えたい。
ハーフタイム明けにユナイテッドのベンチを出たポール・ポグバがセンターサークルでボールを持った場面。対峙した自軍アンカーマンに相手ハーフから戻るスピードを上げて加勢したフィルミーノのハードワークが、ヘンダーソンによるボール奪取と最終ライン寸断のパスを可能にしたと言える。