――理屈じゃない、とは。

大越　勝ち負けを争う、メダル獲得を競う、そこに一生懸命取り組む人間の姿そのものが素晴らしいのであって、そこで生まれる感動に理屈はないわけです。スポーツは、変に理屈をつけてその意義を考えるようなものじゃなくて、自然の人の営みとしての延長線上にある。そこには、いち人間の葛藤と周囲を取り巻く人間ドラマがあって、人間社会の縮図そのものなんです。だからスポーツ番組のキャスターを経て、「スポーツを見ることで伝わることはたくさんある」という確信を持てました。

「『スポーツを見ることで伝わることはたくさんある』という確信を持てました」©Wataru Sato

「私も長くやっていればいいもんじゃないなって（笑）」

――今年も、甲子園やプロ野球を沸かせた松坂大輔選手や斎藤佑樹選手をはじめ、数々のアスリートが現役を引退しました。先ほど大越さんがおっしゃった人間ドラマではないですが、アスリートたちが現役時代に見せた輝きは一生心に残り続けますよね。

大越　短いからこそ輝くんだと思います。松坂投手が甲子園、プロ野球、メジャーリーグで見せたスターの振る舞い、斎藤投手が駒大苫小牧戦で田中将大投手と見せた死闘……そうした一瞬の輝きは、スポーツファンのなかで何度も思い出されるものですよね。そうした輝きを見せてくれたアスリートには、絶対的な尊敬の念があります。到底敵わないなと。だから思うんですよ、私もキャスターを長くやっていればいいもんじゃないなって（笑）。（前編よりつづく）

（衣装協力：STORY ＆ THE  STUDY、Atto Vannucci）