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《選手間投票MVP》大谷翔平の「勝ちたい」発言は“移籍志願”ではない…OB高橋尚成が語る〈エンゼルス地区優勝の可能性〉
text by
高橋尚成Hisanori Takahashi
photograph byGetty Images
posted2021/10/29 17:06
コミッショナー特別表彰の授与はMLB全体でも2014年のデレク・ジーター(ヤンキース)、ビン・スカリー(アナウンサー)以来7年ぶり。現コミッショナーのロブ・マンフレッド体制となってからは初の快挙だ
エンゼルスにはお金がないわけではないので、シーズンオフの動きは要注目です。現状、だいたい70億円くらいの補強予算があると言われていますが、それをどう使っていくのか。これまでのように大物FA選手との契約に大金を払ってしまうと他の選手が取れなくなるので、たとえばリリーフ3人で30億円、コンスタントにローテを守れる先発2人で40億円とか、どのように資金を割り振っていくかが非常に大事になってくると思います。
やはり大谷にはエンゼルスのユニフォームが似合う?
大谷の「ファンも球場も好き。ただそれ以上に勝ちたい」といった発言が、「エンゼルスから出たがっているのでは」という憶測を呼びましたね。でも、野球選手である以上は「勝ちたい」のは当たり前のことだと思うんですよ。ましてやあれだけの選手ですから。大谷としては、チームメイトたちを見て「これだけいい選手たちが揃っているのに、勝てないのはおかしいだろう」と感じているんじゃないですかね。先に言ったように、補強が成功すればプレーオフにも出られるはずですし、おそらく大谷はそこを指摘している。それが違ったニュアンスで報道されて、過熱してしまっただけじゃないですか。
移籍だとか、契約更新をしないだとか、本人はそんなつもりで言ったわけではないでしょう。むしろ、誰よりも「エンゼルスで勝ちたい」という気持ちが強いはずです。二刀流を許容してくれた球団で、これだけいろんなことをサポートしてもらって、恩義を感じているのは間違いない。エンゼルスを強くして、みんなで秋にもう少し野球をやりたい、ファンの人にもっと球場に来てもらいたい。そういう気持ちからの「勝ちたい」という言葉だったと僕は捉えています。
実際、エンゼルスと大谷の相性はものすごくいいと思いますよ。入団時から「なにをやってもOKだ。とにかく君の好きなようにプレーしてほしい。それをチームがサポートする」というスタンスでしたし、他の球団でこれまでと同じように二刀流ができるとは限らないですし……。個人的には、やっぱり大谷はエンゼルスで見たいし、あのユニフォームがマッチしている感じがします。他の球団のユニフォームも似合うかもしれませんが(笑)。
日本では「なお、エンゼルスは敗れた」といったフレーズが定着しているようですけど、補強次第では十分に地区優勝争いができるチームです。少なくとも、ずっとエンゼルスのことを見てきた僕は大きな可能性を感じています。大谷の今後を占う意味でも、今オフの動きは非常に重要になってくるでしょうね。球団OBとしては、できるだけ早くアストロズの時代からエンゼルスの時代になってほしいなと願っています。
(構成/曹宇鉉)
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