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「皆さんにも覚悟を持ってもらいたい」大型補強で注目の島根の司令塔・安藤誓哉がファンに語ったリーグ優勝への決意
posted2021/10/29 17:00
text by
大橋裕之Hiroyuki Ohashi
photograph by
Kiichi Matsumoto
「上を目指すことは、本当にこれから壁が迫ってきます。(でも)それを乗り越えるためにも本当にファンの皆さんにも覚悟を持ってもらい、一緒に臨んでいきたい」
島根スサノオマジックのキャプテン・安藤誓哉は、10月2日の開幕戦を終えて、多くの歓声で沸き上がったホームの松江市総合体育館で、こう言っていた。
開幕前から大型補強によって注目を集め、初戦のたった1試合だが王者・千葉ジェッツに100対94の鮮烈な勝利を挙げたことで、“スサマジ”ファンの期待は爆上がり。チームとして初の「チャンピオンシップ進出」とその先の「リーグ優勝」を目標に掲げる中で、この言葉には少し勇気とためらいが感じられた。その言葉の冒頭に「本当にファンの皆さんにこういうことを言うのもなんなんですけど」と、添えられているからだ。ただ、アルバルク東京で過去2度のリーグ優勝を経験した安藤だからこそ、そこに至るまでに良い時も難しい時もあることを知っている。だから言っておく必要があったのだろう。
第5節を終えた10月28日現在、島根は6勝3敗の西地区4位――過去3度のB1挑戦で開幕1カ月時点でチームの勝ち越しは初めてだ。わずか9試合であるが、見る者にインパクトを残し、また課題も出てきた印象である。
リーグ屈指の攻撃的なスタイル
まずインパクトで言えば、ポール・ヘナレ新ヘッドコーチ(HC)の下、40分間攻防の切り替えの速いトランジションバスケによって、リーグ屈指の攻撃的なチームへ生まれ変わった。フィールドゴール試投数はB1で2番目、オフェンスリバウンドもB1で3番目の多さで、平均得点(88.3)も同3位。平均得点は昨シーズンより10点以上も上積みされた。開幕前にヘナレHCはアルバルク東京ら強豪を例に「誰が見てもそのクラブのバスケだなという色、スタイルがある。まずはそれを確立させたい」と話していたが、この1カ月でそれは早くも見て取れる。
そして、この攻防を司るのが、ポイントガードの安藤に他ならない。金丸晃輔やニック・ケイという日豪代表クラスの新戦力や、リード・トラビスやペリン・ビュフォードら昨シーズンから9名の既存戦力がいる中で甲乙つけがたいが、彼の存在感は特に際立っている。指揮官は選手をシステムにはめるのではなく「システムで生かすことを目指したい」という考えを持つが、真っ先に当てはまっている選手であろう。