分かりやすくスタッツを見れば、開幕戦で24得点、翌3日はキャリアハイとなる28得点をたたき出し、第5節終了時点で平均得点15.3を記録。アシストも平均5.9本を数え、いずれも6シーズン目を迎えるBリーグ在籍期間で最高の成績を残す。今季の出場時間も平均31.00分とチームハイだ。さらに10月9日のレバンガ北海道戦での安藤は終盤に勝ち越しの3ポイントを決めるなど、勝負強さも遺憾なく発揮している。今夏の新チーム結成後、指揮官から「アルバルク東京でキャプテン。ポイントガードとしてもリーグナンバーワンを争い、チームを引っ張れる」という理由で主将に指名された男の活躍は目覚ましい。

　A東京時代とは違うこの変化に驚く方もいるだろう。ただ、本人にしてみれば島根での役割を全うしているにすぎない。「周りの選手は僕を信じて走ってくれています。できるだけ多くのクリエイトをしないといけない」と開幕戦で自らの責務を語っていた。奇しくもヘナレHCは、ニュージーランド代表で現役時代はポイントガードを務めた人物。指揮官が同じポジションなのも巡り合わせであるが、新天地でこれまで経験の無いスタイルに挑戦するため、存分に自分を発揮してやらなければいけないと安藤が「覚悟」を持って臨んだ結果が、現れているのだ。

補強後のチームに見えてきた課題

　一方で、チームとしては課題も出てきた。冒頭の言葉を借りれば、それは小さな「壁」かもしれない。4勝1敗で迎えた大阪エヴェッサとの第2戦（10月17日）、横浜ビー・コルセアーズとの第1戦（10月23日）で今シーズン初の2連敗。攻撃では、相手のディフェンスに阻まれボールを止められ、1on1で仕掛ける単調な攻撃を重ねた。その結果リズムの悪いシュートは決まらず、リバウンドも拾えずに、相手に良い流れで反撃を許した。防御では、ペイントエリアを守ることができずに失点し、展開の速いオフェンスに持ち込むことができずじまい。横浜との第2戦（10月24日）も後半にリバウンドで挽回して勝利を呼び込んだが、前半は前日の良くない流れを引きずったほどだった。

新コーチとして島根を率いるヘナレHC。19年に香川に招聘される前は、ニュージーランド代表のHCを務めた経験を持つ

すべての写真を見る（15枚）

　具体的に横浜戦後の指揮官と選手たちの声に耳を傾けてみる。ヘナレHCは2戦ともに敗因として「ディフェンス」を指摘した。第1戦は序盤から2-2-1プレスから2-3ゾーンを敷く策も講じたが、これについては相手への対策というより自分たちに起因したものだった。

【次ページ】　チームとして得点するために