猛牛のささやきBACK NUMBER
《オリックス25年ぶりV》中嶋聡監督はなぜ“我慢”できるのか? 選手やコーチの証言「目玉が飛び出そうになることも」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKYODO
posted2021/10/28 11:15
2連連続で最下位に沈んでいたチームを見事な手腕で建て直したオリックス中嶋聡監督。会見では笑顔がこぼれた
「最初、若い選手で行くしかない状況だったんですよね。あの時は太田(椋)がセカンドでしたし、佐野(如一)もいた。そういう(若手の)中で、たぶん一番にへばるのは紅林だろうと思っていたんです。たぶんすぐへばるだろうから、安達が来た時に、安達との併用になるだろう、というのが最初の想定でした。
だけど、やっているうちに、『こいつはへばることがないのかな』と思い始めて、『どこまでやれるだろう?』と思いながらやっていると、『あれ? こいつは行けるのかな』と。そうなった時に安達と話し合い、安達をセカンドにコンバートして、紅林で行こうと思いました」
そう覚悟を決めてからは、「しんどくても、何が何でも試合に出すからな」と荒削りだった19歳の紅林をショートで起用し続けた。
その紅林は10月25日のレギュラーシーズン最終戦で、好守備で先発の山本由伸を助け、楽天・田中将大の球に食らいついて値千金の2打点を挙げる活躍を見せ、優勝を引き寄せた。
ラオウ「心の余裕が全然違います」
中嶋監督は、どの選手に対しても、一度の失敗では外さない。必ず再度チャンスを与える。
「なんとか取り返そうとする姿を見せてくれたら、僕は、我慢はできますね」
後半戦、リリーフで安定した投球を見せたK-鈴木は、「選手からしたら『やってやろう!』となりますね」と言う。
杉本も、以前は「打てなかったら落とされる」という焦りから、ボール球にまで手を出してしまっていたが、今年はどっしりと構えて球を見極められるようになった。
「今は心の余裕が全然違います」
頼れる4番となり、本塁打は現時点でトップの32本、打率も3割に達した。
以前は勝負どころで縮こまっているように見えた選手たちが、今年はミスを恐れず伸び伸びと、アグレッシブにプレーするようになった。
田口コーチは言う。