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「パリには絶対自分が行く」“ミライモンスター”藤波朱理が五輪金の“吉田沙保里2世”に挑戦状〈17歳で世界選手権制覇〉
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byKoji Fuse
posted2021/10/25 06:00
初出場の世界選手権で、1ポイントも失うことなく金メダルを獲得した藤波朱理
快進撃は止まらない。今年5月には“もうひとつのシニアの国内主要大会”である全日本選抜選手権も制して、初めて世界選手権出場のチャンスを掴んだ。女子ナショナルチームの笹山秀雄監督は「全日本選手権のときから(代表のひとりとして)藤波選手を見させてもらっているけど、組手がうまい」と唸る。
「それに(リーチが長く)懐に入れさせないので、対戦相手からすると戦いにくい」
大人に交じると一見華奢に見えるので、「体力やパワーの部分でどうか」という声もあったが、世界選手権決勝では欧州選手権3位という実績を持つモルドバの選手を問題にせず、第1ピリオドに10-0のテクニカルフォールで下して世界の頂に就いた。
左右にステップを踏みながら相手を崩し、タイミングを見計らって片足タックルへ。しかも入るだけではなく、しっかりとそのまま相手をコントロールしてバックを奪う。腕とりの攻防になっても一歩も引かない。その体勢のまま回りながら、隙を見て再び片足タックルを決める。最後は得意のアンクルホールドで相手を一回転。結局、最初から最後まで藤波は2点ずつ加算しながら試合を進めるという横綱相撲を演じていた。
全試合無失点&テクニカルフォールで圧勝
決勝戦の印象を聞くと、藤波は高校生とは思えない驚くべき感想を漏らした。
「ものすごく楽しんで戦えました」
ワンサイドゲームは決勝戦だけではない。藤波は初戦(2回戦)から準決勝までの3試合も全てテクニカルフォールで、しかも無失点で勝ち上がっている。つまり全4試合ともパーフェクトゲーム。こんな芸当を現役高校生レスラーが世界の大人の実力者たちを相手に成し遂げたのだから恐れ入る。Amazingしたいのはこっちの方だ。
もっとも、無失点という部分にこだわっていたわけではない。
「そこの部分はあまり意識していませんでした。自分から攻めることを意識して戦ったことが結果につながりました」