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「パリには絶対自分が行く」“ミライモンスター”藤波朱理が五輪金の“吉田沙保里2世”に挑戦状〈17歳で世界選手権制覇〉
posted2021/10/25 06:00
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph by
Koji Fuse
「I feel amazing」
ミックスゾーンで現在の心境を英語で質問されると、藤波朱理(三重県・いなべ総合学園高)は当たり前のように流暢な英語で答えた。10月6日(現地時間)、ノルウェーの首都オスロで開催された2021年レスリング世界選手権。続けて「それまでの試合同様、決勝戦も早く終わったが」という質問が英語で飛ぶと、藤波は巻き舌の英語で即座に返した。
「It was so excited」
失礼ながら、他の日本人選手だとほとんど通訳を必要とする。少なくとも今回はそうだった。フリースタイル女子53kg級で優勝した藤波の日本人離れした対応に、海外や地元の取材陣は身を乗り出した。会見後、現場で筆者が「英語はどこで習ったの?」と日本語で聞くと、藤波は「小1のときから英会話教室に通っている」と打ち明けた。
「こういう機会もあると思って」
現在高校3年生の藤波にとって今回は初めてのシニアの世界選手権出場であったとともに、初の英会話スキルのお披露目の場であったか。
番組名がそのままニックネームに
父の俊一さんは日本体育大出身の指導者で、現在はMMA転向を目指す兄の雄飛は2017年の世界選手権で3位になったほどの実力者。レスリング一家の中で育った藤波も、4歳から父と兄の影響でレスリングを始めた。
その才能はキッズ時代から早くも開花。中学生のときには世界とアジアのカデット選手権で優勝している。高校生になると、その活躍ぶりはさらに加速する。1年生でインターハイを制すると、毎年スウェーデンで開催の国際大会ではカデットの部で3連覇を達成した。昨年12月には初めて出場したシニアの全日本選手権で優勝している。
その直後、有望な若手アスリートをフィーチャーするドキュメンタリー番組『ミライモンスター』(フジテレビ系)で、藤波の学校や自宅での日常や、全日本選手権での活躍ぶりが放送された。放送後はそのまま番組名が彼女のニックネームになった。違和感はない。誰の目から見ても、藤波が将来のレスリング界を背負って立つ“ミライモンスター”であることは間違いないのだから。