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本気で馬主になるにはどうすればいい?「金持ち」は必須条件だけど“宝くじ”ではNGのワケ…〈有名馬主も最初はただの“競馬ファン”〉
text by
江面弘也Koya Ezura
photograph byAFLO、Photostud
posted2021/10/22 17:01
(左)オジュウチョウサンのオーナーは一口馬主からスタート(右)ソダシなど多くのGIホースのオーナーである金子真人氏
1000万円で落札→18億稼いだ馬も
所得も財産もあり、競馬施行規程にも抵触せず、必要書類を揃えてJRAに馬主申請をしたあなたは、次に馬を買うことになる。
馬を買うには大きく分けて二つの方法がある。一つは 生産牧場から直接購入すること(「庭先取引」と呼ばれている)で、もう一つがせりである。庭先取引は牧場とのつきあいや信頼関係が必要だが、せりは新参者でも自由に参加できる。地方競馬に行く馬を含めて、せりの1歳馬の平均価格は1000万円ほどで、落札馬の中間値は450万円ぐらいになる。
もっとも有名なせりは、社台グループの生産馬が数多く上場される、日本競走馬協会のセレクトセールである。ディープインパクトをはじめ多くの名馬を輩出してきたせりで、一流血統の仔馬を手に入れたい大馬主が参加して億単位の高額馬も続出する。ことしは「ウマ娘」のCygamesを子会社にもつ藤田晋氏(サイバーエージェント)が参戦し、18頭で総額23億6700万円という買い物をして話題になった。
そこまでの予算はないという人には日高軽種馬農協(HBA)が主催するせりがある。日高地方の牧場で生産された馬が上場され、高い馬でも数千万円というせりだが、1000万円で落札されて18億円余を稼いだテイエムオペラオーをはじめ、ホッコータルマエ、ビッグアーサーなどの名馬が売買されている。即戦力の馬がほしいという人には、競走馬として育成された2歳馬が上場されるHBAトレーニングセールがある。ヒシミラクル、モーリスらがここからデビューした。ヒシミラクルはオーナーの阿部雅一郎氏が650万円の一声で落札している。
さて、馬主バッジをもらい、馬も買った。次に発生するのが預託料である。厩舎に入る前は育成牧場に預けることになる。預託料は牧場によって差はあっても、概ね一日あたり7000円台から8000円台といったところ。ひと月で20数万円の経費がかかる。厩舎に入るとこれがぐんと跳ねあがり、1頭あたり月に60万円から70万円になる。預託料を滞納する馬主の話もたまに聞くが、馬は人の何倍も金がかかるということだ。
馬主になるための「3つのルート」
ところで、馬主になるきっかけは大きく分けて三つのパターンがある。一つは世襲。親が馬主で、自分も競馬が好きで馬主になった人だ。ウオッカの谷水雄三氏やセイウンスカイの西山茂行氏は二代めの馬主だ。天皇賞(秋)に出走予定のヒシイグアスの阿部雅英氏は三代めで、父子三代でヒシマサルという名前の馬を所有したことで話題になった。
二つめは、競馬には縁がなく、興味もなかった人が、馬主の友人に誘われて馬を持つケースである。その代表はキングカメハメハ、ディープインパクトなど4頭のダービー馬のオーナーとなった金子真人氏。秋華賞ではソダシが負けてもアカイトリノムスメが勝った、日本一の“馬運”を誇る大馬主である。
そして、おそらくもっと数が多いのが競馬ファンから馬主になった人たちだ。最近は「こどものころ『ダービースタリオン』に夢中になり、馬主になりたいと思った」とか「競馬をはじめたときから馬を持ちたかった」というような理由で馬主になった人が多い。起業し、成功し、馬主になる夢をかなえた人たちで、競馬ファンのサクセスストーリーといえる。