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《現役引退》「ヨシノブの姿が被ってしょうがない」2019年の亀井善行は“チームに勇気を与える”トップバッターだった 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byNanae Suzuki

posted2021/10/21 12:00

《現役引退》「ヨシノブの姿が被ってしょうがない」2019年の亀井善行は“チームに勇気を与える”トップバッターだった<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

“いぶし銀”のリードオフマンとして2019年のリーグ優勝に貢献した亀井善行。原監督の信頼が厚いからこその1番起用だった

35本塁打を放って新境地を開拓。

 その期待に応えて高橋もトップバッターとして暴れまくった。

 横浜との開幕戦では1回の打席で初球を右翼スタンドに運ぶ開幕戦先頭打者初球本塁打という離れ業を見せると、7月26日には早くも9本目の先頭打者本塁打を放ってプロ野球新記録も樹立した。

 シーズン終盤には古傷の腰痛によって成績を落としたものの、それでもこの年は1年間を通じて戦線離脱なくプレーし、3年ぶりに規定打席にも到達。リーグ6位の3割8厘を記録すると共に、自己最多の66四球で出塁率は4割4厘、本塁打も35本を放ってOPS.983と新境地を切り開いたのである。

 脂がのりきった中堅からベテラン選手をトップに据えて、チームに勢いをつける――高橋を1番に据えた指揮官の狙いは見事にハマって、その年、チームは5年ぶりにセ・リーグの覇権を手にした訳である。

3年目の亀井が見ていた由伸の姿。

 そのとき亀井はプロ入り3年目だった。

「高橋さんの1番はすごかった。いきなりホームランを打てるし、ヒットもガンガン打って、チームに勇気を与えられるトップバッターでした」

 同じ外野手ということもあり、かつては沖縄自主トレにも同行するなど、亀井にとって高橋は目標であり憧れであった。高橋監督時代の2017年6月18日のロッテ戦では、チャンスで前を打つケーシー・マギー内野手が3度も敬遠される屈辱の中で、3度目の正直でサヨナラホーマーを放つと指揮官の胸で泣き崩れた姿も強く印象に残っている。

 だから――。

「高橋さんの1番が目標なんて全然、考えていません。僕は僕でしかない。僕なりの1番打者になるだけですから」

 亀井が1番打者として考えることは、チームの勝利のために1打席の質をいかに高めるかということだった。

【次ページ】 「やっぱりそこが自分の役割だと思っています」

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