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《引退》阪神・岩田稔が明かした“号泣会見”と病気から逃げなかった16年間…ビールかけが実現したら「あかんと言われても行く」
text by
田中大貴Daiki Tanaka
photograph bySankei Shimbun
posted2021/10/19 11:03
質問する記者も涙した岩田稔の引退会見。家族への想いを聞かれて涙が溢れ出した
――引退会見では2009年9月9日中日戦の完封勝利のお話が出ていました。
あの日の昼頃に長女が誕生したので、皆さんに報告したんです。そしたら(藤川)球児さんが「お前、持っているか持っていないか、今日の試合でわかるな」ってプレッシャーをかけてきたんですよね(笑)。安藤(優也)さんも同じ状況で勝利投手になったことがあったので、それも踏まえて頑張らなって思った記憶があります。
確かその試合の前日、うちがチェン(・ウェイン/当時、中日)に2安打完封されていたんです。僕も9回終わるまで2安打に抑えていたので、「このままいけばチェンと一緒や!」と。そしたら2アウトから森野(将彦)さんに三塁打を打たれました。最後はブランコを三振にできてよかったですけど(笑)。WBCなど、たくさん思い出はありますが、あの試合はやっぱり今でも特別ですね。
及川雅貴、高橋遥人、そして藤浪晋太郎
――今シーズンの阪神タイガースは優勝争いに加わっています。若手でもいいピッチャーが育っていますよね。どんな話をしていますか?
今の選手たちはみんな能力が高い分、力で体を操作してしまう選手が多い。それだと1年間投げられたとしても、次のシーズンがダメになる。自分の体験上、大事なのは「最低限の力で最高のパフォーマンスを出す」だと思っていて。そんな話はよくしましたね。
――岩田選手が期待するピッチャーは?
及川(雅貴)や(高橋)遥人は同じ左腕ということもあってたくさん話しましたし、(藤浪)晋太郎ともいろんな会話をしました。
――藤浪選手とはどんな話を?
彼は体の使い方をすごく考えているんです。今のところそれが上手くかみあわないんだろうなという感じがあって。答えは見えているんだけど、どの道中をどうしていくか、という部分。それを1つずつクリアできたらとんでもないピッチャーになる。今でさえすごい力があるし、肩や肘に大きな故障もない。体の使い方を自分なりに表現できるようになれば期待できますよ。
――岩田選手はすごく「考えてプレーしていた選手」という印象があります。
客観的に「こうしたらいいのにな」という一方的な思いはあっても、人それぞれ体の使い方は違いますからね。僕の場合は体が硬かったので、体のしなりを使うのではなく、硬さの反発を使って投げることを意識して、自分のトレーナーと相談しながらやってきました。僕から言えるとすれば、自分の体をちゃんと理解してくれて信頼できる人にサポートしてもらうことが大事かなと。自分自身、トレーナーにすごく助けられたので、そういった存在がいると全然違うんだろうなと思います。
本当にみんなには優勝してほしいです。僕は16年、優勝経験がないので(笑)。