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《パリ五輪世代》MF松村優太(鹿島)が1年目にぶつかった「ドリブラーの宿命」 “静学10番の先輩”旗手怜央との共通点とは?
posted2021/10/15 17:00
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
J.LEAGUE
10月下旬に開幕するAFC U23アジアカップウズベキスタン2022予選に向けて、直前合宿に臨んでいたU-22日本代表のMF松村優太(鹿島アントラーズ)は、9日のU-20全日本大学選抜との練習試合後の会見で、こう口にした。
「僕にしかできないという自負はある」
松村は静岡学園高校時代から「ドリブラー」としてその名を馳せてきた。
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彼のドリブルは、フェイントを駆使して軽やかに相手をかわす曲芸のようなスタイルではなく、シンプルに相手の守備網を破壊していく猪突猛進タイプ。対峙する相手の重心、呼吸、配置、そして空いたスペース、味方の立ち位置まで把握をした上で、ゴールや目的地まで最短ルートで運んでいく。ボールタッチにおいても、アウトサイドで持ち出すのか、インフロントで相手から隠すのか、局面に合わせて素早く最良の選択を探すのだ。
目の前の相手をかわすことに美学を見出しがちになるそれとは大きく一線を画し、チーム戦術に大きな影響力を持つ稀有なドリブラーでもある。
「ドリブルしている中で相手の出方を見て判断できるように、しっかりとボールと自分のタッチの相関関係を意識してやっている。1人目をかわして、2人目で(ボールを)奪われてしまったら意味がないと思っているので、相手が何人いても抜いていけるようなドリブルを心がけています」
その才能は多くのJクラブの注目の的になった。松村の獲得に注力した鹿島の椎本邦一スカウト統括部長は「まず、あのようなタイプが(現在の)鹿島にいない。ドリブルであれだけ仕掛けられるのは今どき珍しいと思った」と評価していた。
ドリブラーの宿命にぶつかった1年目
だが、そんな松村もプロ1年目は「ドリブラーの宿命」というべき壁にぶち当たった。
組織の中でいつあのドリブルを出すのか。チームとしての有効な武器にできるのか。ドリブラーにとって永遠のテーマだと言っていい。
球離れを早くし、テンポよく相手陣内まで攻め込むサッカーが主流となっている中で、ドリブラーは“オールドスタイル”と捉えられがちになる。特に松村のように中・長距離のドリブルを得意とする選手にとっては、より生きづらい潮流になっているのが現実だ。多くのドリブラーがこの壁の前に自分の長所を見失い、その能力を生かしきれないまま淘汰されていく姿をこれまで何度も見てきた。“強烈な個”は、時として邪魔者になる。