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《パリ五輪世代》MF松村優太(鹿島)が1年目にぶつかった「ドリブラーの宿命」 “静学10番の先輩”旗手怜央との共通点とは?
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byJ.LEAGUE
posted2021/10/15 17:00
プロ2年目の今季はスタメン出場が増えている松村優太。パリ五輪世代の1人として飛躍が期待される
恐れず言えば、1年目の松村は「空回り」も多かった。自分を出そうとするあまり、周りとのタイミングが合わない。逆に周りに合わせようとしてしまい、絶好のパスがきてもドリブルがワンテンポ遅れ、たちまち劣勢に追い込まれる。ワンタッチプレーが得意な同期・荒木遼太郎がすぐに順応していく姿を尻目に、松村の出場機会は限られていた。リーグ戦13試合に出場したことはルーキーとしては評価すべき数字でもあるが、スタメン出場の機会はなく、全て途中出場だった。
しかし、松村はその壁を前にしても自らを見つめ直す情報収集能力とそれを処理する力を備えていた。単に懐疑的になるのではなく、どうすれば自分のドリブルがチームの歯車となれるかを考え続けたのだ。
それは最近のプレーにも現れる。
たとえば、松村はボールの動きに合わせて、身体の向きを頻繁に変えるようになった。相手の背後でボールを受ける意識を強めたことで、ドリブルを仕掛ける前にすでに1人かわしている状態を作る。つまりボールをもらう前から“1対1のドリブル”を仕掛けているのだ。足元でボールを受けることよりも、より優位なポジションに立つことを優先したことで、味方がパスを出しやすい状況を生み、よりゴールに近い位置での仕掛けを狙える機会が劇的に増えた。
その証拠に2年目になる今季は、出場時間を延ばしている。リーグ戦でのスタメン出場は6試合。プロ初ゴールを含む2ゴールをマークし、鹿島の武器の1つとして機能するようになった。
「鹿島で武器になっているという認識を持てているので、あとはそれをどうパズルのように組み合わせていけるかという部分になってきます。1年半プレーしてきた中で、お互い(特徴は)分かってきているので、(ドリブルを)チームの中で出せているという手応えはあります」