ファイターズ広報、記す。BACK NUMBER
再認識した「斎藤佑樹」という選手の価値 ファイターズ広報が明かした《引退発表からの心揺さぶられる3日間》
text by
高山通史Michifumi Takayama
photograph bySankei Shimbun
posted2021/10/09 06:02
現役最後のマウンドに上がった斎藤佑樹。近くで支えてきた広報がその舞台裏を明かす
試合後、報道陣への取材対応を終えて3日間を終えた。
一緒に広報業務にあたったのが、今シーズンからファームで広報業務にあたっている榎下陽大氏である。高校野球ファンであれば、まだ記憶に新しいだろう。斎藤選手が脚光を浴びることになった2006年夏の甲子園の準決勝。鹿児島工高のエースとして投げ合った。高校日本代表でも、チームメートだったのである。
大卒で同期入団した数奇な縁を持つ。自身は4年前の2017年、ユニホームを脱いでいた。3日間、すべてを終えた後だった。神妙な表情で一言、漏らした。「寂しいですね。斎藤が引退するなんて、想像できなかったですから。頑張ったと思います」。スタンドには2年前に退団し、今季はメキシカンリーグで活躍した中村勝投手もお忍びで、駆けつけていた。
近年、ほぼファームで暮らした。その姿を知る首脳陣ができる限りのささやかな舞台を用意し、それに異議を唱えることなく応える選手たちがいた。そして涙した清宮選手ら後輩、多くのチームメート、スタッフがいた。そして優しさで包み込んだファンの方々の姿を見た。心揺さぶられる3日間だった。
野球に、自分に、周囲に――。
斎藤選手は、すべてに誠実だったのだろう。みんなが心を寄せる磁力を見て、清廉潔白に現役生活を完走したことを確信できた。
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