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「自分より、娘も、家族も限界でしたから」荒木絵里香(37)が一石を投じたキャリア選択《18年の選手生活を終えて》

posted2021/10/08 11:05

 
「自分より、娘も、家族も限界でしたから」荒木絵里香(37)が一石を投じたキャリア選択《18年の選手生活を終えて》<Number Web> photograph by KYODO

記者の質問に丁寧に言葉を紡ぐ荒木絵里香。清々しい表情が印象的だった

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田中夕子

田中夕子Yuko Tanaka

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KYODO

前編に引き続き、現役引退を発表した荒木絵里香選手のインタビューをご覧ください(全2回の後編/前編へ)

 東京五輪の閉幕から約2カ月が過ぎた10月5日、荒木絵里香は引退会見に臨んだ。多くの記者が集まる中、4大会に及ぶ五輪出場を含めたキャリアを振り返った。

 2014年の出産の半年後に復帰したため、離れて暮らすことになった娘のこと。セカンドキャリアや女性の社会進出のこと。「バレーボールをしている時には一番うざい、邪魔になるけれどやってみたい長さにしたかった」と前日に切ったという髪型に至るまで、多岐に渡った質問の1つ1つに、笑顔で応じていた。

 五輪後に「やりきった、とは言えない」と曇らせていた表情が、今日は清々しい。

 そんな顔を見ていたら、あー、本当に終わりなのか、と寂しさがよぎる。

 東京五輪で最後。それはわかってはいても、一縷の望みも抱いていた。もしかしたら、もう1シーズン、Vリーグの舞台でプレーする姿が見られるのではないか、と。

「それも少し、考えはしました。去年に予定通りオリンピックがあったら、その後もVリーグに出て、いろいろな人たちに感謝を伝えて終わろうと思っていたし。でも1年延びた時点でその選択肢もなくなりましたね。自分より、(娘の)和香も、家族も限界でしたから」

バレーボール界に一石を投じたキャリア

 1人の選手として頂点を極め、日本代表として大きな目標を追う。しかも1人の女性として結婚、妊娠、出産という夢も叶えた。女性の活躍が社会全体の課題でもある中、トップアスリートとして世界と戦いながら育児に取り組む姿勢は、バレーボール界だけでなく、スポーツ界、そして社会全体に一石を投じたと言っても決して言いすぎではないはずだ。

 そんな大げさな、と笑いながら本人は否定するだろう。なぜなら事あるごとに、彼女はこう言い続けてきた。

「パパさんアスリートはいないのに、ママさんアスリートって言われるの、変だし嫌ですよね」

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