酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「ドラフトにかからなかったら野球を…」東芝をやめて1年勝負の26歳とヤンチャな投手の覚悟〈独立Lのドラフト候補〉
posted2021/10/04 17:00
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Kou Hiroo
独立リーグ球団には、2つの大きな目標がある。一つはリーグ優勝。そしてもう一つはNPB球団に選手を輩出することだ。選手をNPBに送り出せば、育成費が支払われる。地元の注目度も上がるし、チームのステイタスも向上するのだ。
四国アイランドリーグplusの香川オリーブガイナーズは2021年前期、22勝9敗3分で3シーズンぶりの優勝を遂げた。
独立リーグの指導者は原則としてNPB出身者が務めるが、香川の近藤智勝(ともすぐ)監督は、独立リーグ育ちという異色の存在。チームをだれよりも知り、選手と共に頑張ってきた苦労人だ。今季、ドラフトで期待がかかる2人の選手をピックアップしてもらった。
近藤壱来は独立リーグのテストも落ちていた
近藤壱来(かずき)は、今年の前期シーズンでは無双の働きでチームを優勝に導いた。
がっちりした体つき、鋭い眼光、きかん気な性格が滲み出ている。
1998年8月7日生まれの23歳、徳島県の鳴門渦潮高校から2017年に社会人の三菱自動車倉敷オーシャンズに進み、すぐに都市対抗の予選にも出場したが、2年で野球をやめてしまった。あと1年頑張っていたらドラフト指名される資格ができたのだが……。
「社会人に入ったら野球一本で頑張れると思ったら結構普通に仕事をして、それを終えてから練習でした。思っていたのと違うと思ったんですね。野球だけやりたいと思って、野球部をやめて独立リーグに行こうと思ったんです」
鳴門渦潮高は徳島県では強豪の一角を占める。エースとして3年夏の県大会は決勝まで進んだし、近藤は地域では有名だった。そこで地元の徳島インディゴソックスに入団しようと考えた。
「徳島の方には『君なら受かるよ』と言っていただいたので、その気でいたんです。個別テストを受けたのですが、野球をやめてしばらく経っていたし、全然練習もしていなかったので、そのテストで落ちてしまったんです。球団の方は幻滅したのだと思います。ガキだったんですね、僕は」