酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「ドラフトにかからなかったら野球を…」東芝をやめて1年勝負の26歳とヤンチャな投手の覚悟〈独立Lのドラフト候補〉
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKou Hiroo
posted2021/10/04 17:00
独立リーグ香川の近藤壱来と望月涼太に朗報は届くか
「でも、最後まで調査書は来なかったんです。社会人では試合に出る機会が少なかったからかもしれません。シーズン中に、スカウトの方も声かけてくださいましたが、ドラフトの時には自分の中では指名はないことはわかっていたんです」
そんな切ない状況を経て、独立リーグに挑戦することを決めた。
「そのまま社会人に残る選択もありましたが、もう1回挑戦したくなったんです。守備も打撃もレベルアップして、プロに行きたいと思ったんです」
香川に入って中軸を打ち、遊撃、三塁を守った。数字も残した。
64試合197打数65安打4本塁打40打点19盗塁 打率.330
「細かい戦術などを見れば、社会人のほうがレベルは高いです。今思えば、勝つための野球をきっちりしていたなと思います。でも独立リーグは勝つだけでなく、育成も目的なので、個人が伸びることができる環境ではないかと思います」
「ドラフトにかからなかったら野球をやめる」
東芝時代は、一般の仕事はせずに野球に専念したが、東芝の一員として振る舞うことを求められた。しかし独立リーガーにはそうした縛りはない。
「高松で一人暮らしです。自分で食事作るのも初めてです。慣れない環境ですが、プロ野球に行くためだと思っています」
近藤智勝監督は、望月涼太を「二遊間の守備がよく、足も速く、総合的な野球偏差値が高い」と評する。そして「1年でプロへ行くという覚悟を感じる。プロへ行くならスーパーサブ的な位置からスタートするのではないか」という。
目標とする選手は、ソフトバンクの今宮健太。
「遊撃でも二塁でも素晴らしい守りで、肩も強い、ああいう選手になりたいですね。家族は『東芝にいたほうがよかったのに』と言いながらも応援してくれています。正直、年齢との戦いです。1年勝負でこっちに来たわけですから、ドラフトにかからなかったら野球をやめる覚悟です」
望月涼太が打席に立つと、「光る光る東芝」のコンバットマーチが流れる。本人にとっては切ない気持ちもあるだろうが、来年、違うユニフォームではつらつとプレーする望月の姿を見たいと思う。<高知・九州編に続く>