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「大谷翔平効果で少年野球の入団希望者が急増している」って本当? 取材して分かった少年野球の“深刻な現実”「一番の問題はケガ」
posted2021/10/01 11:05
text by
沼澤典史Norifumi Numazawa
photograph by
Getty Images
エンゼルス大谷翔平の一挙手一投足に日本中が熱狂している。今年の大谷は、打ってはペレスやゲレーロと熾烈なホームラン王争いを繰り広げ、投手としても2桁勝利まであと1歩。その暴れぶりはオールスターゲームでの特例扱いを万人に納得させ、1番指名打者ながら先発投手という超異例の出場を果たしたほど。米「TIME」誌が9月に発表した「世界で最も影響力のある100人」にも野球界で唯一選出されており、名実ともに世界のベースボールを背負う存在と言えよう。
そんな大谷による経済効果は、関西大学の宮本勝浩名誉教授の試算によれば、米国で203億円、日本で36億円とされるが、経済以外でも「大谷効果」は波及しているらしい。SNSには「大谷翔平に憧れた小学生たちが地域の野球チームに入団している」という投稿が散見される。
それが事実ならば日本球界にとっては福音だ。全日本軟式野球連盟によると小学生の軟式野球プレイヤーは、2010年には29.6万人(※注)いたが、10年後の2020年には18.7万人と約11万人も減少している。この期間の小学生人口の減少率は10%程度だが、その3~4倍の速さで球児が消えていっているのだ(※注.2010年のチーム数の調査結果はあるが、登録児童数そのものの調査は存在しないため、1チームあたり20人として概算した)。
「ここ5年で女子選手の割合が上昇しました」
このように競技人口減少にあえぐ少年野球界に、「大谷効果」はどの程度影響しているのか。手始めに、筆者の所属会社のオフィスがある東京・新宿区の学童野球チームに当たってみたところ、「最近は低学年を中心に少しずつ入団希望者が増えています。大谷選手との関係は不明です」という、ささやかではあるが有力なコメントを得られた。
2021年度の東京都の統計によれば、新宿区の小学生の数は、1万721人。母集団のボリュームが限られるため、大谷効果が小さくしか現れていないのかもしれない。そこで次は、3万人超の小学生を抱える江戸川区の現状を調査。同区で活動する学童野球チームが加盟する、江戸川区学童少年軟式野球連盟はこう答えた。