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「吹っ切れましたよ」オカダ・カズチカが棚橋弘至との闘いでついに解いた“レインメーカー”の封印…9年前のIWGP初戴冠も棚橋戦だった〈G1クライマックス〉
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2021/09/23 11:02
9月19日のG1クライマックス開幕第2戦にて棚橋弘至と対戦したオカダ・カズチカ
棚橋にもG1優勝の道は開けている
棚橋には対戦成績を五分五分に戻したい願いがあった。この日勝てば、6勝6敗3分とイーブンにもっていけた。体調はいい。試合前、私が通路を通りかかった時、棚橋はトレーナー室の入口近くでうつ伏せになってマッサージを受けていた。私は立ち止まった。何気ないいつもの光景だったが、ゆったりとリラックスしていてその背中からも好調さを感じ取れた。
7月25日の東京ドームで飯伏幸太の代役で挑戦者となりIWGP世界に挑んだ。8月14日にはアメリカ・ロサンゼルスでランス・アーチャーを倒してIWGP・US王座を獲得。9月4日の西武ドームでは長期欠場からの復帰戦となった飯伏の挑戦を退けた。体と心もすごくいい状態であるのがわかった。
「疲れない」はずの棚橋だったが、満身創痍でボロボロの時期には疲れを隠せなかった。コロナのブレイクが棚橋の肉体にはちょうどよかったのだろう。ダイエット作戦が功を奏したのかよく動ける。棚橋が別の肉体を持ったのかとさえ錯覚してしまう。
初戦でオカダに敗れたとはいえ、棚橋にもG1優勝の道は開けている。オカダが言うように「まだ、始まったばかり」なのだ。20回目の出場となるG1だが、棚橋は3年ぶり4度目のG1優勝を描いている。そして棚橋はもっと先を見ている。新日本は来年50周年を迎える。この50周年に最もふさわしい現役のレスラーは誰かとなった時、多くの人が思い浮かべる顔は棚橋だろう。棚橋抜きに新日本の50周年を語ることはできない。
「G1から東京ドーム、コロナ禍を乗り越えてチャンピオンにたどり着く物語をお見せする」
棚橋はファンにそんな棚橋を約束した。
オカダは高いドロップキックの後、9年前を思い起こすようにレインメーカーを棚橋にぶち込んだ。
こうして、またきっかけをつかんだ男と、敗れてもギラギラと輝いた男の運命はこの先どうなるのだろうか。