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「吹っ切れましたよ」オカダ・カズチカが棚橋弘至との闘いでついに解いた“レインメーカー”の封印…9年前のIWGP初戴冠も棚橋戦だった〈G1クライマックス〉 

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原悦生

原悦生Essei Hara

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posted2021/09/23 11:02

「吹っ切れましたよ」オカダ・カズチカが棚橋弘至との闘いでついに解いた“レインメーカー”の封印…9年前のIWGP初戴冠も棚橋戦だった〈G1クライマックス〉<Number Web> photograph by Essei Hara

9月19日のG1クライマックス開幕第2戦にて棚橋弘至と対戦したオカダ・カズチカ

 最後にオカダが棚橋と戦ったのが2019年7月6日のダラス、G1クライマックスの開幕戦だった。新日本プロレスの「G1」を世界にアピールする大会だった。この時はオカダが勝っている。この日までの2人の通算の対戦成績は14試合を戦ってオカダの6勝5敗3分。

 オカダがG1に優勝したのは2012年と2014年の2回だ。オカダはIWGPを中心に戦ってきた。だが、2020年1月5日、内藤哲也に敗れて以来、1年8カ月もIWGP王座はオカダの腰に戻って来ていない。

「迷い」を口にするオカダだが、絶対王者のようだった男が、長いこと精彩を欠いていたことは否定しようがない。体調をカバーするためだったのだろうか。レインメーカーを使わなくなり、オカダ流にマネークリップと呼んでいる複合、スリーパーホールド、コブラクラッチに頼ることになる。

 時折、復調の兆しを見せても、それは単発で終わった。試合に集中できないように見えたオカダは「強いオカダ」に戻れないでいた。9月4日の西武ドーム(メットライフドーム)ではジェフ・コブにパワーで押し切られて、ピンフォール負けしている。

「いろいろ、吹っ切れましたよ」

 新日本の顔であるIWGP王者から一歩引いたポジションで試合をしている姿は、強さを前面に出していたオカダとはかなりかけ離れていた。タッグマッチでは場外でダウンしている姿が目立った。

「公式戦の中での1試合かもしれないけれど、大阪のお客さんやオレにとってはすごい意味のある1試合だったと思う。今までのオカダ・カズチカじゃなくて、レインメーカー、オカダ・カズチカが帰ってきた。オレが帰ってきたからにはすごい戦い見せて行きます。世界中を元気にしていく」(オカダ)

 この日、オカダの顔には力があった。それまで言葉では強がっても、死んだ目を隠すことはできなかった。4つのコーナーに上がってファンに応えるオカダの目には気迫と自信がよみがえっていた。

「いろいろ迷っている部分っていうのは、試合にもリング上にも出てきていると思いましたし、そんな迷っている状態で勝てるほど棚橋弘至っていうのは甘くない。チャンピオンですし、もっと衰えているかと思ったら、全然衰えてない。疲れないな、と改めて思いました。いろいろ、吹っ切れましたよ。やっぱり、プロレスラーが元気を与えて行かないと。

 迷っていた人間が『プロレス面白いでしょう。みんな元気になって行こう』って言っていられないですから。迷った男には、そんなこと言う資格はないし。出せるものをすべて出して、戦っていこうかな、と。棚橋弘至が初戦で、最高のスタートが切れたんじゃないかと思います」(オカダ)

【次ページ】 棚橋にもG1優勝の道は開けている

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