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【石川遼30歳】「(松山)英樹や丸山さんのように勝てる選手になって…」丸山茂樹に明かした日本復帰の理由、稲垣吾郎との再会
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph bySankei Shimbun
posted2021/09/17 11:01
30歳を迎えた石川遼。日本ゴルフ界を牽引する存在として、これからも期待を背負っていく
<名言2>
36ホールで1ホールも楽しめなかった。
(石川遼/Number728号 2009年4月30日発売)
◇解説◇
プロ1年目の活躍が認められた高校生・石川は、米ツアー3試合の推薦出場に続いて、特別招待での“夢の舞台”マスターズへ出場する権利を得た。2009年、当時17歳の出来事である。
「マスターズではまだ自分にとっては夢の舞台でしかないし、PGAの舞台に立てることでも十分夢なんです。(中略)タイガー・ウッズやフィル・ミケルソンにも今の時点では戦いたいとかではなく、ただ会ってみたい」
記者会見では戸惑いと感激の入り交じった素直な心境を述べていた。
マスターズ前哨戦となった米ツアーで不安を小さくしてオーガスタに臨んだ。しかし、肝に銘じていたはずの「自分の力量以上のものを出そうとするとすぐに跳ね返される」という聖地の掟を痛感することになる。
初日を1オーバーの51位で乗り切った石川は、2日目の終盤で勝負に出た。16番では事前に考えてきた安全策を捨て、バーディー狙うために厳しいピン位置を攻めた。予選通過ラインまで1打差に迫っていたことが、その決断を急がせたのかもしれない。ティーショットはピンに向かってまっすぐ飛んだものの、あとわずかのところで手前のバンカーに落ちていった。そこからアプローチをミスして、痛恨のダブルボギー。続く17番でも同じくダブルボギーを叩き、予選突破の可能性が大きく遠のいた。
「(16番は)いいショットでした。でも、あのピンに打っていく実力はまだないのかなと思わされた。あの場面でピンを狙いたくなるのもまだまだ気持ちが弱い証拠。あそこに打てる力量がないのに打っていくからミスが生まれる」
6オーバーの73位で予選落ち。「36ホールで1ホールも楽しめなかった」と言葉にした石川だったが、得難い経験を与えてくれたコースに向かい頭を下げ、オーガスタを後にした。
夢見るばかりでは夢は叶えられない。憧れているだけでは知ることのできなかった現実を見た。タイガー・ウッズが、マスターズが、「憧れ」から「目標」に変わった瞬間だった。