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〈銀メダル車いすバスケのスピードスター〉鳥海連志22歳が『ローポインターはサポート役』を覆せた理由「でかい壁があれば、よし、と思う」
posted2021/09/07 11:05
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Getty Images
躍進。快挙。飛躍。さまざまな賛辞が送られて不思議はない。東京パラリンピックにおける車いすバスケットボール男子日本代表の活躍は、大会のハイライトの1つとなった。
過去の最高成績は1988年ソウルと2008年北京の7位。2016年リオデジャネイロでは9位。それから5年、決勝に進むとアメリカと激しい攻防を繰り広げ、残り5分で逆転されたが60-64と、前回大会王者を追い詰め、銀メダルを獲得したのだ。
それぞれが持ち味と力量を発揮する中、大会序盤から目をひいたのが鳥海連志だった。
初戦となった8月26日のコロンビア戦では15得点、17リバウンド、10アシスト、3つの項目で二桁の数字を記録する「トリプルダブル」で勝利に貢献。準々決勝では強豪のオーストラリアを相手にチームで最長の36分40秒に出場、15得点、12リバウンド、9アシストを記録。スティールでも印象の強いプレーを見せた。追い上げを許した終盤に鳥海のスティールからの速攻で得点し勝利へつなげた。
迎えた決勝でも両チーム最多の18リバウンドを記録するなど存在感を発揮した。
「僕たちがやり続けたバスケットを貫き通して戦えたと思います」
「トランジション・バスケット」の戦術で生きた鳥海の速さ
背丈や腕の長さで優位に立つ海外の強豪国に対抗するため、日本代表が打ち出してきたのが攻守の切り替えの速さで勝負する「トランジション・バスケット」だった。鳥海は自身のプレーについてこう語った。
「しっかりとディフェンスから流れを作ること、速いテンポに持ち込むことができました」
その手ごたえ以上の活躍であったことを、改めて大会を振り返ると感じさせる。特筆すべきは、「持ち点は低い方に入るのにそれを覆すような活躍を見せたこと」にある。