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<発掘>キョロキョロするルーキー長嶋茂雄、バットを拾う川上哲治…63年前のTVドラマ(遊星王子)に「巨人vs阪神」のお宝映像が使われていた!
text by
高木圭介Keisuke Takagi
photograph byKYODO
posted2021/09/03 06:00
写真は昭和33(1958)年、プロ1年目の長嶋茂雄の打撃フォーム。当時の巨人vs阪神の貴重映像がTVドラマに収録されていたとは驚きである
遊星王子のスタートから3週目、昭和33年11月18日に『消えたホームラン王』というエピソードが放送されている。遊星王子には同じ宣弘社作品ということで、月光仮面にも出演している俳優がスライド式に数多く出演しているが、このお話ではセネタースの主砲にして球界を代表するホームラン王・宮下選手を、月光仮面の主役である大瀬康一が演じている。
大瀬は月光仮面や、後番組の『豹の眼』で主人公モリー、『隠密剣士』など、昭和30年代の数々のヒーロー作品で主人公を演じ続け、ウルトラマンや仮面ライダーの登場以前、国産ヒーローのアイコン的存在だった。
この回は当時、問題視されていた野球賭博に関連したお話で、悪の組織が「セネタースvsブラックソックス」でブラックソックスを勝たせて儲けるために、セネタースの主砲・宮下選手を誘拐して隅田川沿いの倉庫に監禁。それを遊星王子に発見され、悪の組織は一網打尽に退治されるというお話だ。
後楽園球場と川崎球場のチャンポン
注目すべきは、遠景から撮影される観客込みの球場と試合シーンは後楽園球場、大瀬ら俳優による野球シーンの撮影は番組スポンサーである東芝のお膝元・川崎球場が使用されていること。なのでシーンによって、後楽園球場と川崎球場の風景がチャンポンとなっている。まだ視聴者がビデオで映像を見返すなど夢また夢、当時のTVサイズとモノクロ画像ならば視聴者もまず気が付かなかったことだろう。
余談だが、冒頭、悪の組織の配下を演じる久野四郎が、野球中継を眺めつつ「そりゃ、もう何と申しましょうか~」「打ちも打ったり、取りも取ったり」と吟じているが、これは当時、NHKのプロ野球中継解説者を務めていた小西得郎と、スポーツ実況の草分け・松内則三(NHK)の物真似ミックス。
小西は解説者就任以前にプロ選手経験がないにも関わらず、松竹ロビンスの監督に就任し、セ・リーグの初代優勝監督となった人。松内は講談調のスポーツ実況を発明し、現在も使われる「ピッチャー振りかぶりました」という言葉を生み出したことでも知られている。